敵はママ!? 十歳ミミのサバイバル日記

第10話 ほんとうのこと

警察署にきた。

小さな部屋。

冷たい机。

紙コップのお茶。

わたしは震えていた。

目の前にいるのは、

葉月先生。

KONTOさん。

そして、パパ。



怖い。

逃げたい。

でも。

もう逃げない。

警察の人が言った。

「ミミさん」

優しい声。

「話せることだけでいいよ」

ミミは、息を吸った。

そして。

全部話した。



嘘をついたこと。

ママに勉強とピアノ、

そして生活を管理支配されて辛かったこと。

葉月先生を傷つけたこと。

最近パパが怖いこと。

サバイバル日記のこと。

ママの日記のこと。

防犯カメラ。

運転手との会話を盗み聞きしたこと。

通帳のお金がどんどん減っていること。



全部、

途中で泣いた。

何度も、

でも、

止めなかった。

話し終えると、

静かだった。

その時。

警察の人が言った。

「……お父さん」

低い声。

「本当に現場に行ってませんか?」

沈黙。

パパが、目を閉じた。

長い沈黙。

そして。

ぽつり。

言った。

「……行きました」

え。うそ。



呼吸が止まる。

パパは、うつむく。

「でも」

震える声。

「殺してない」

涙が落ちた。

「俺は……」

拳を握る。

「最低な夫だった。

 妻の性格を知っていたから、

 わざと単身赴任を希望した。

 ミミが辛いことは想像できた。

 でも、気づかないふりをして逃げていたんだ」

声が震えていた。

「何度も思ったんだ」

長い沈黙。

「……妻が、死ねばいいのにって」

わたしの胸が苦しくなる。

パパ。

「でも、本当に死んでほしかったわけじゃない」

泣きながら言う。

「自由になりたかっただけなんだ」

「でも、あの日」

震える。

「お金を持ってある人に会いに行ったら、

 妻がその人と揉めてた」

部屋が静まる。

「怖くなって……逃げた」

え?

警察の人が言う。

「その人物ですが」

資料を出す。

写真。

わたしの心臓が止まりそうになる。

そこにいたのは、

パパじゃない。

若い男の人だった。



葉月先生が、崩れ落ちた。

「……嘘」

顔が真っ白。

警察が続ける。

「葉月先生の元恋人、二宮さんです。

 彼は借金を抱えていました」

「葉月先生が心の病気になり、

仕事を辞め、

今すぐ結婚はできないと言ったので、

婚約破棄だと受け取った。

それで、ミミさんの両親に慰謝料請求」


KONTOさんが顔をしかめる。

「つまり恐喝?」

警察がうなずく。

「学校教育問題を利用し、接触してきた。

 KONTOさんにも相談があったのでは?」

「ミミさんの母親の個人情報を聞いてきたので、

 この問題を共に解決しようとしていると思って、

……いろいろ教えてしまった」


パパが小さく言う。

「わたしは……払った」

苦しそうだった。


「教師を心の病気にして辞めさせた。

 あんたの奥さんがやったことは迷惑きわまりない犯罪だ。

 職場にも連絡する。

 世間に広く公表すると言われた。

 早く終わらせたくて……金を渡した」





言葉が出ない。

パパは続けた。

「運転手の田宮からも、恐喝された」

警察官が口をはさんだ。

「二宮が現場にいた田宮運転手に告げたんだ。

『夫は妻を殺したいと思っている。

金払いのいい男だ。

あんたも、請求してみろよ。

殺してくれてありがとうと払ってくれるよ』

そう教わったからやってみたと

やつは白状した」

パパが頭を抱える。

「次々と請求がきた。

だから、

お金が消えていった。

わたしにはもう

正しい判断ができなくなっていた」



葉月先生が泣き崩れている。

「私のせい……」

震える声。

「私があの人を信じたから。

 ミミさんの家のそれぞれの人の気持ちを

話してしまったの。

仕事を辞めて、

気持ちの落ち込みが激しくて

言わなくてもいいことまで彼に話してしまった。

ミミさん、ごめんなさい」



***

数日後、

テレビのニュース。

二宮さんが映っていた。

悪い顔をしている場面が大写しになった。

事故現場でもみ合い、過失致死と恐喝容疑で逮捕された……と。





画面がぼやける。

全部、終わった。

……本当に?




その夜。

パパはビールを飲んだ。

そして、泣いた。

初めて見た。

大人なのに、

子どもみたいに泣いていた。

「守れなかった」

震える声。

「ミミも」

「ママも」

わたしは、

初めて

パパ背中にの抱きついた。




パパも

苦しかったんだ。

完璧じゃなかった。

弱かった。

でも。

今は味方だ。

***

数週間後。

スマホが鳴った。

葉月先生から。

短いメッセージ。

ミミさんへ

「さようなら。

あなたからお母さんを奪ったのは、私の関係者でした。

本当にごめんなさい。

でも。

あなたに会えて良かった。

助けてと言えたあなたは、強い子です。

どうか、生きてね」

涙が止まらなかった。

でも。

今度の涙は。

少しだけ、あったかかった。


【日記】

前は、

生き残るために嘘をついた。

でも今は、

助けてって言える。

私は、

もう、一人じゃない。
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