釣れない女と腹黒王子
屋上の少女

変な女



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………あ。


目が合った――。





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「一橋くんっ♡私とお昼食べよ〜♡」


面倒。


「え〜、私も食べたいぃ〜!いいよね、憐♡」


んな訳ないだろ。


「ごめんね、今日は一人でいたい気分でさ」


俺がやんわりと断れば、女共は名残惜しそうに離れてく。
…本当に、面倒臭い。



「え〜……じゃあ、今度食べよ〜♡」

「うん、勿論。」



誰が、お前みたいな香水臭い女と飯食うかよ。


いつも貼り付けている“優等生”の顔の下で、俺は溜息を吐く。



“ 星稜学園の王子サマ ” と言ったら、この地域一帯で知らない高校生は居ないだろう。


それ程有名な、学園の王子サマ。


それが俺。一橋 憐。

この星稜学園(せいりょうがくえん)の2年生。


色素の薄い、サラサラの髪。
涼やかで、切れ長な目。
クォーターだから、少し青みがかった大きい瞳。
すっ、と通った鼻筋に、形のよい唇。

全てが完璧で、美しい。


そんな見た目を、誰かが王子だ、と言い始めてから。

俺は、“星稜学園の王子サマ”、と呼ばれるようになった。



毎日毎日、猫撫で声で、媚びるような声で、俺に擦り寄ってくる女達。

俺とお近づきになりたい。あわよくば、付き合いたい。

そんな下心が見え見えの女達。


うざったくて、しょうがない。


でも、俺は1年生の頃から“優等生”という設定でやっている。
他人に、しかも女に。
キレたりなどしたら、イメージダウンに繋がる。

それだけは、阻止しなくては。



だから、俺は毎回逃げるように屋上へ上がる。


……屋上は、案外誰も来ない、俺の休息場所。
誰も居ない―――。





はずだった。








………あ。


目が合った――。







「…………こんにちは」


屋上へあがると、
扉の近くにもたれ掛かり、弁当を頬張っている女がいた。

その女は、俺に気づくと、口元を隠しながら挨拶をした。

艶々とした黒髪の、セミロングヘア。
瞳は大きく、美しい。
鼻筋も通っていて、中々に美少女だった。

……美少女だとしても、また、女か。

…このまま戻ってしまえば、体裁が悪い。


声をかけて来るだろうから、多少、構ってやるか。




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………何故、声をかけてこない?



あれから数分は経ったが、一向にこの女が声をかけてくる気配はない。


……嗚呼、俺に話しかけるのが恐れ多いのか?



………いや、違う。



女はずっと、ずっと弁当を食っている。



…………この女、弁当にしか意識を向けていない…、!?

この俺が、隣にいるのに?


話しかけることは疎か、興味もなく

弁当を貪っている……!?



…………普段、キャーキャー言われるのは億劫だ。

でも、俺の承認欲求を満たしてくれる。


でも、この女にはそれがない。

いや、それどころか興味すら、関心すら持ってない。


………………そんなの、俺のプライドが許さない。




何を血迷ったのか、俺はこの女に声をかけた。






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