私が私でいられたのは
一章 君との出会い

時刻は朝の6時。
部屋中にスマホのアラームが響き渡る。
私ー星崎愛は顔をしかめてベットから起き上がった。
そしてスマホに視線を落としアラームを止める。
今日は新学期だ。
私は少し浮かれている。
新しい環境、新しいクラスメイト、新しい先生…。
なにもかも新しいものばかり。
今は頑張ろうと思えているがついこの間まではそんな気持ちは1ミリもなく憂鬱な気持ちで溢れていた。
なぜなら5年生のクラスが最高すぎたからだ。
先生は面白いし優しい。
クラスメイトは面白いし男女関係なく仲がいい。
なんて「模範的な理想のクラス」なのだろう。
そんなクラスだったからこそ春休み中はクラス替えが不安でしょうがなかった。
朝食を済ませ、顔を洗うと私はメイクタイムに入る。
もちろん、小学校の校則でメイクは禁止されている。
なのでバチバチには決めない。決められない。
コンプレックスの鼻を高く見せたり、顔を小さくみせる化粧をするだけだ。
あとは仕上げにチークで血色感をつける。
私がメイクを始めたのにも理由がある。
5年生の頃容姿についていろいろ言われていたからだ。
「ネタだから」
と、自分に言い聞かせつつも心のどこかでは傷ついていた。

扉が開く音がなる。
「鏡の前で何してるの。遅刻するよ」
頭の中でぐるぐる考えていると声をかけられた。
「まだ準備終わってないの。お母さんが洗面所使いたいだけでしょ」
そう言って前わ見ると私とお母さんが鏡越しに並んでうつっていた。
嫌な気持ちになる。
私のお母さんは鼻が高い。
目も大きくてぱっちり二重。
そして私よりもスタイルがいい。
といっても身長は低めだけど。
それに比べて私は、
鼻が低い。
右目は奥二重、左目は二重。
そしてちょいデブ。
共通点は身長の低さくらいだ。
ああ、なんでこんなに違うんだろう。
憂鬱な気持ちをかかえつつ、洗面所を後にした。

「おい晴ー!今日の国語だるくね?」
「それな。確か作文書くんだよな」
昇降口が開くのを待っているとふいにそんな会話が聞こえてきた。
そこにいたのは4人組の男子集団。
4人中2人は顔見知りがある男子だ。
1人は章(あきら)、5年生の頃クラスが同じで仲が良かった男の子だ。
もう1人は晴(はる)。
章と同様な関係だが、それに加えて私の彼氏だ。
あとの2人は顔を見たことがあるくらいで名前など知らない。
今日はクラス替えだ。
仲のいい友達となれればいいけど。
せめて晴とは同じがいいな。
ドキドキしながらワクワクしてる謎の感覚に包まれた。
昇降口が開いたかと思うと先生が出てきた。
そして昇降口の壁に大きい紙を4枚貼った。
それはクラス表だった。
周りの音が遮断されたように自分の世界にのめり込んだ。
私の名前…。
6年3組とかかれたクラス表に私の名前はあった。
だがそこに晴の名前はなかった。
仲がいい子の名前もなかった。
仲が「よかった」子の名前はあったけど。
スタートダッシュは最悪だ。

「まじで!?同じクラスやったー!!」
「美華と同じなの嬉しすぎる!!」
「いやーこの一年美華がいれば楽しいこと間違いなしだな」
ほらみろ。
6年3組というプレートを目印に教室に入ったものの、さっきからあの「美華」の周りに人が集まっている。
あの子好きじゃないんだよなぁ。
いかにもギャルで男子との距離感が半端なく近い。
そのため女子の反感をたくさん買っている。
さらに自分の意思が強い子だから子分みたいな女子が続出。
ああいう子、きらい。
少なくとも私とは合わないタイプだ。
小さい頃はよく遊んでいたけど、何年前の話だよって感じで。
私は気配を消して、星崎愛と書かれている紙が置いてある机にすわり、つっぷする。
小学校生活最後の一年なのに。
「ーーーあい。ちょっと?聞いてる!?」
私は勢いよく顔をあげた。
「あ、ごめん。聞いてなかった」
いつの間にか私の机の前に立って話しかけてきた女の子ー堀崎麗(うらら)はむんっとほほを膨らませていた。
「もー!同じクラスだね!って言ったの!何回言っても全然返事しないから気絶してるかと思ったよ」
「あはは。最近耳が遠くてさー」
あ、今の笑顔ぎこちなかったかな。
麗は、私他の人にも挨拶してくるね、と言い私のそばから離れた。
麗は名前通り綺麗な顔立ちをしている。
入学式の時から美しいという言葉を知らない私にとってあれほど美しいと言いたくなるような美貌を持っていたのだから。
私は考えてしまう。
麗と話している時の私はどんな顔をしているのか。
だから麗と喋っている時の私はぎこちない顔をしているだろう。
麗のことは心から好きだ。
妬ましい気持ちもないが羨ましくないと言ったら嘘になる。
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