ふたつの時を、重ねていく【『ふたつの弧が、重なるとき』番外編/定期更新中】
◇
狭いシングルベッド。
薄いタオルケットに二人でくるまり、横向きに向かい合っている。
「……美絵」
「……うん?」
ずっと私の髪を優しく撫でていた彼が、尋ねてきた。
「俺のどこが好き?」
「……えっ」
(めずらしい……)
祥ちゃんからそんなふうに直接的な質問をされるのは初めてだった。
彼はこちらをじっと見つめながら、私の答えを待っている。
少し驚きつつも、「えっと……」と思考を巡らせた。
「優しくて、カッコよくて、時々可愛くて、努力家で……甘えさせてくれるところ、かな?」
もちろんすべて本当だ。
けれど、改めて言葉にして挙げてみると、彼への想いのほんの一部しかすくい取れていないような気がしてしまう。
「あとは?」
彼は私の髪に指を通しながら、続きをねだってきた。
「うーんと……ファミレスの制服姿も、コーチのときの顔も……あっ! あと、バスケやってるところも、カッコよかったなあ」
頭の中に思い浮かぶ祥ちゃんは、どれも特別だ。
「……ふーん」
自分で聞いておいて照れくさくなったのか、目を逸らしながら少し身体を持ち上げて、私の頬にそっとキスをした。
「祥ちゃんは?」
「ん?」
「私の好きなところ」
私も気になって、尋ね返す。
「えー……全部かな」
ズルい答えに、思わず彼のおでこをペチンと叩く。
「ちょっと! それはダメ。私だって全部好きなのに、ちゃんと言ったんだからー」
むくれる私を見て、祥ちゃんは「ははっ」と声を上げて笑った。
(あ……この顔も、好き)
ずっと恋しかった笑顔。
それを見られたことが嬉しくて、手のひらを彼の頬に添えた。
「……俺は、美絵の笑った顔が一番好きだよ」
「……あとは? 少ないっ!」
私の苦情に、彼はまた小さく笑いながら「んー」と考える。
「中学のとき、拾ったボールを少し恥ずかしそうに渡してくれたところ。友達と廊下で楽しそうに話してたところ。部活で記録出して喜んでたところ……」
当たり前のようにそんな昔の記憶まで遡って並べていく。
その想いの長さが、私の心をあたためていく。
「……祥ちゃんって、本当に私のこと好きなんだね」
「うん」
迷わず即答した彼は、私をぎゅっと、けれど優しく抱きしめる。
「中学生の俺に、自慢したい……」
幸福に浸るようにそう呟いた彼が可愛くて、柔らかな笑みがこぼれた。
大きなぬくもりに包まれながら、心から思う。
(もう二度と、離れたくないな)
腕の中から顔を上げて、その願いが伝わるように、私からキスをした。
幸せそうにそれに応えてくれる彼を、これからは私も守っていきたい。
そんな新しい気持ちが、私の中に芽生えた夜だった。
―― 終 ――
また次の更新をお待ちいただけたら幸いです!
狭いシングルベッド。
薄いタオルケットに二人でくるまり、横向きに向かい合っている。
「……美絵」
「……うん?」
ずっと私の髪を優しく撫でていた彼が、尋ねてきた。
「俺のどこが好き?」
「……えっ」
(めずらしい……)
祥ちゃんからそんなふうに直接的な質問をされるのは初めてだった。
彼はこちらをじっと見つめながら、私の答えを待っている。
少し驚きつつも、「えっと……」と思考を巡らせた。
「優しくて、カッコよくて、時々可愛くて、努力家で……甘えさせてくれるところ、かな?」
もちろんすべて本当だ。
けれど、改めて言葉にして挙げてみると、彼への想いのほんの一部しかすくい取れていないような気がしてしまう。
「あとは?」
彼は私の髪に指を通しながら、続きをねだってきた。
「うーんと……ファミレスの制服姿も、コーチのときの顔も……あっ! あと、バスケやってるところも、カッコよかったなあ」
頭の中に思い浮かぶ祥ちゃんは、どれも特別だ。
「……ふーん」
自分で聞いておいて照れくさくなったのか、目を逸らしながら少し身体を持ち上げて、私の頬にそっとキスをした。
「祥ちゃんは?」
「ん?」
「私の好きなところ」
私も気になって、尋ね返す。
「えー……全部かな」
ズルい答えに、思わず彼のおでこをペチンと叩く。
「ちょっと! それはダメ。私だって全部好きなのに、ちゃんと言ったんだからー」
むくれる私を見て、祥ちゃんは「ははっ」と声を上げて笑った。
(あ……この顔も、好き)
ずっと恋しかった笑顔。
それを見られたことが嬉しくて、手のひらを彼の頬に添えた。
「……俺は、美絵の笑った顔が一番好きだよ」
「……あとは? 少ないっ!」
私の苦情に、彼はまた小さく笑いながら「んー」と考える。
「中学のとき、拾ったボールを少し恥ずかしそうに渡してくれたところ。友達と廊下で楽しそうに話してたところ。部活で記録出して喜んでたところ……」
当たり前のようにそんな昔の記憶まで遡って並べていく。
その想いの長さが、私の心をあたためていく。
「……祥ちゃんって、本当に私のこと好きなんだね」
「うん」
迷わず即答した彼は、私をぎゅっと、けれど優しく抱きしめる。
「中学生の俺に、自慢したい……」
幸福に浸るようにそう呟いた彼が可愛くて、柔らかな笑みがこぼれた。
大きなぬくもりに包まれながら、心から思う。
(もう二度と、離れたくないな)
腕の中から顔を上げて、その願いが伝わるように、私からキスをした。
幸せそうにそれに応えてくれる彼を、これからは私も守っていきたい。
そんな新しい気持ちが、私の中に芽生えた夜だった。
―― 終 ――
また次の更新をお待ちいただけたら幸いです!