傷付いた心を癒すのは 〜男性が苦手な私の心を癒してくれたのはお隣さんでした〜
(難しいな……)

 そう溜め息をついていると、後ろから足音が聞こえた。

「うわっ、最悪」

 独り言のようなトーンではあったけれど、確かにそう文句が聞こえて振り返る。
 そこには井上さんが立っていて、彼女は露骨に嫌そうな顔で私を見た。

「先輩、こんなところでサボってるんですかぁ?」
「……給湯室に行きたかったんだけど、人で埋まってて」
「えー、さっき通ったときは誰もいませんでしたよ? 真面目な先輩もこんなところでサボったりするんだぁ」

 ふんわりとした花柄のスカートを翻し、私が座っているベンチの前まで回り込んでくる。
 井上さんはにんまりと口角を上げると、後ろ手で手を組みながら甘えるような仕草で私にすり寄ってきた。

「先輩、男性が苦手なんですよね?」
「えぇ、まぁ……」
「ってことは、片瀬さんもですか? ほらぁ、さっき駐車場で会ったとき、すごく距離が近かったから。そんなふうには見えないなぁ、って」
「苦手であることには変わりないよ。彼とうまく話せているのは、最近案件で関わりがあるから……。総合病院の件もあったし」

 ちくりと嫌味を交えて言ってみるものの、彼女には刺さらない。それどころか、逆に溜め息を吐かれた。
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