隣の席の悪魔 〜あの頃は、明日が当たり前だった

新幹線

「やばーーー!!
修学旅行だぁぁぁ!!!」

朝。

新幹線ホーム。

私は大興奮だった。

ホームに溢れる人。

スーツケースのタイヤの音。

前で話してる先生の話は長いけど、
楽しい!

だって、
修学旅行だから!!!

「星野、
朝からうるさい」

隣の空くんは、
眠そう。

なんでそんなに冷静でいられるの。

「え、空くん楽しくないの!?」

「普通」

「もったいな!!」

その時。

後ろから、
葛西くんの声。

「空、
学校の外でも完全に保護者じゃん」

「違う」

空くんが即答。

葛西くんの肩が震えてる。

◇

「席自由だけど、
なるべく班で集まって座れよー!」

先生の声。

「窓側!」

「後ろ行こー!」

みんながゾロゾロ動き出す。

空くんは、
一番後ろの列の窓側へ座った。

端っこ、
好きそう。

そう思いながら、
私はその隣へ座る。

荷物を置く。

お菓子出す。

準備完了。

その時。

「……なんで、
もう横いんの」

え。

顔を上げる。

空くん。

少し呆れた顔。

私は瞬きをする。

「……え?」

周りを見る。

まだみんな、
席を決めてる途中。

あ。

私。

無意識で座ってた。

「……あ」

その瞬間。

前の席から、
葛西くんの笑い声。

「お前ら、
もう席固定なん?」

「っ……!」

私は一気に顔が熱くなる。

「たまたまだし!!」

隣の空くんは、
呆れた顔のまま、
窓の外へ目を向けた。

◇

新幹線。

発車。

景色が流れ始める。

「うわーーー!!!」

私は窓の方へ身を乗り出した。

「動いてる!!」

「新幹線だからな」

「速っ!!」

「知ってる。
知ってるから暴れんな」

空くん、
ちょっと笑ってる。

その時。

「つむぎ、
何してるのー?」

前の席の女子が振り向く。

私は高々と、
お菓子袋を掲げた。

「お菓子食べるとこ!」

「朝から?」

「修学旅行だから!」

「つむぎっぽい!」

その隣の葛西くんが、
笑いながら手を伸ばしてくる。

「俺も食う」

「ちょっと!
まだ私も食べてないのに!」

「空も食べたいって」

その瞬間。

空くんが、
ちらっとこっちを見る。

数秒。

そして。

「……食べる」

え。

「空くん、
お菓子食べるんだ!」

「悪い?」

「意外!」

「偏見」

私は笑いながら、
お菓子を差し出す。

その時。

新幹線が少し揺れた。

「あっ」

バランスが崩れる。

お菓子、
落ちちゃう!

その瞬間。

空くんの手が、
私の手とお菓子の袋を、
同時に掴んだ。

「……また、
危なすぎ」

その時。

葛西くんが、
にやにや笑った。

「保護者、
仕事早」

「うるさい」

ぶっきらぼうに返す空くんに、
頬が緩む。

新幹線。

お菓子。

笑い声。

窓の外が、
どんどん知らない景色になっていく。
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