隣の席の悪魔 〜あの頃は、明日が当たり前だった

雪の日

朝。

カーテンを開けた瞬間。

「わぁ……!」

外。

真っ白。

雪。

めちゃくちゃ積もってる。

「すごっ……!」

私は急いで制服に着替えた。

寒いけど。

雪の日って、
ちょっとだけ特別だ。

◇

学校。

廊下。

窓の外。

真っ白な校庭。

「空くん見て!!
めっちゃ積もってる!!」

私のすぐ後に登校してきた空くん。

私は窓に張りつく。

「見えてる」

空くん。

いつもの眠そうな顔。

でも。

ちょっとだけ、
口元が緩んでる。

「雪合戦したい!!」

「子どもか」

「冷たい!!」

◇

昼休み。

結局、
雪合戦になった。

「うわっ!!」

「つむぎ逃げろー!!」

校庭。

寒い。

でも、楽しい!

青春だから!

私は雪を丸めて、
葛西くんへ投げる。

「ノッポ野郎ーー!!」

「うわっ!?」

命中。

よし。

その時。

後ろから、
ひやっとした感覚。

「きゃっ!?」

首元。

冷たい。

私は勢いよく振り向く。

「空くーん!?」

空くん。

無表情。

でも。

口角が、
ほんのちょっと上がってる。

「……隙だらけ」

「最低!!」

私は雪を投げ返そうとして、
踏ん張る。

その時。

つるっ。

「わ!」

終わった。

転ぶ。

そう思った瞬間。

ぐいっ。

腕を掴まれる。

「……なんでそうなんの」

近い。

白い息。

雪が眩しい。

「ごめん……」

空くんは少し眉を寄せたまま、
私を見る。

その時。

ふわっ。

風が吹く。

雪が舞う。

そして。

空くんの視線が、
ぴたりと止まった。

「……雪」

「え」

次の瞬間。

空くんの手が、
私の髪に触れる。

思考停止。

え。

近い。

指。

髪。

さらっ。

白い雪を払うみたいに、
空くんの指が動く。

心臓。

うるさい。

空くん。

普通の顔。

すごく自然に、
触れられてる。

まるで、
当たり前みたいに。

その瞬間。

空くんが、
はっとしたみたいに目を瞬く。

そのあと。

ぱっと手を離した。

「……っ」

珍しく。

少しだけ焦った顔。

え。

なに今。

すると。

後ろから、
葛西くんが笑いながら近づいてくる。

「うわ空!!
さらっとやるじゃん!!」

ぴたり。

空気が止まる。

空くんは、
無言。

耳。

真っ赤。

……あ。

私は一気に顔が熱くなる。

「いや今、
完全に少女漫画だったけど?」

「うるさい」

低っ。

でも。

空くん、
ちょっと焦ってる。

珍しい。

私は空くんを見る。

空くんは、
少しだけ眉を寄せる。

「……雪ついてた」

え。

数秒停止。

「そ、それだけ!?」

「それ以外なにがある」

即答。

私はマフラーに顔を埋めた。

心臓。

うるさい。

その時。

空くんが、
小さくため息をつく。

「……もう転ぶなよ」

「空くんのせいだし!!」

「知らない」

雪って、
ずるい。

いつもの距離が、
少しだけおかしくなるから。
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