バナナの皮

バナナの皮



「バナナの皮は滑りやすいよね」

 と、突然ゆうなが言った。

「え……」

 ゆうなとは別に仲良くもなんともない。
 呼び捨てするくらいだからそこそこ親しいんじゃないの? って思われちゃう? でも、呼び捨てするから親しいってわけじゃないよね。
 私たちはただ『私たちは親しい仲です』って暗号を送り合ってるだけ。

 呼び捨てにする=親しい
 一緒に帰る=親しい
 お誕生日おめでとうってLINEする=親しい
 ただ、みんな孤独だって認めたくないだけ。
 孤独じゃないって暗号を送れば、孤独じゃないってことになるからね。

 ゆうなはいわゆる良い子。
 友達もいっぱいいて、みんなと本当に仲良さそう。
 きっと、私みたいに『ゆうなとは親しいふりしてる』とか思ってないだろうな。
 多分、私のことはたくさんいる中距離の友達の一人と思ってて、そう言うふうに振るまってると思う。だって、ゆうなは私のことそんなに好きそうな態度は取らない。
 彼女はきっと私みたいな記号を送って親しいふりしたりしないと思う。
 彼女はたぶん、本当にいいこ。

「バナナの皮は滑りやすい?」

「うん、ほら、あそこ。バナナの皮が落ちてる」

 確かに落ちてる。前方15メートル。歩道の真ん中。
 今は7月で暑いから、バナナの皮は痛んで真っ黒になってる。

「誰か踏んだら、怪我しちゃうかも」ゆうなは本気で心配そうにしてる。

「……ねえ、バナナの皮って、本当に踏んだら滑るのかな?」

「え?だって、バナナの皮って踏んだら転ぶんでしょう?」

 真剣な様子でバナナを見下ろすゆうなは、この皮を拾おうかどうか本気で悩んでるみたいだった。
 私はスタスタ先へ行く。

「そんな人見たことないよ。ゆうなは見たことあるの?」

「……ない」

「ゆうなって結構面白いね。
 結構テキトーだ」

重ねて言うと、ゆうなはちょっと面白そうだった。

「確かに、バナナを踏んだら転ぶって根拠なく信じてたよ」

「都市伝説レベルの情報だね」

ゆうなと何センチか仲良くなった気がした。


< 1 / 1 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

少年吸血鬼はハンターの未亡人に愛を捧げる

総文字数/68,031

ファンタジー29ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
年下の少年とのラブロマンス、ダークな世界観や、人間関係…そんなお話が好きな方に読んでいただきたいです。 一度投稿しておりましたが、大幅に改稿しましたので新作として再度投稿させていただきます。 残酷な表現が含まれます。 流血表現が含まれます。 死の表現が含まれます。 軽度の性的要素があります。 軽度の性的にセンシティブなシーンが含まれます。 この作品は完成しており、数日おきにアップします。 複数の執筆者によって書かれた作品です。 共作者 ひごろもそう 様
表紙を見る 表紙を閉じる
雑貨の企画制作会社に勤める進藤さやかが、束縛系彼氏と、会社の後輩に挟まれて……♡ いつもファンタジー系のお話ばかり、完成してからアップするのですが、初めてのオフィスもの……そして書きながらアップしています。 あまり難しいお話にならないように、肩の力を抜きまくって書きます! 全体を推敲できないので、ちょっと矛盾があるかもしれませんが、楽しんで読んでいただけるよう頑張ります……☺️ 進藤さやか 27歳 雑貨などの企画、制作を請け負う『エモーションライフ』の社員。仕事と恋愛で充実した毎日を送っている。 幸島淳 24歳 『エモーションライフ』社員、さやかの後輩、おとなしく地味な男の子……のようだけど。 秋元司 32歳 さやかの交際相手、やり手のフリー動画ディレクター、インタビュアーなど、なんでもこなす。女子の理想が詰まったハイスペ男性、さやかのことを束縛気味だけど、実は? 三橋社長 58歳 エモーションライフ社長 水木麗 31歳 センターアート社員 秋元司の元カノ
割れ物

総文字数/1,425

青春・友情1ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
女子高生ゆうなの、何気ない日常のおはなし 2

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop