再会ロマンス~幼なじみの甘い溺愛から逃げられない~
「おい、なにが言いたいんだ」
低い声が響き、テツが副社長を睨んだ。
「まぁまぁ、そんな怖い顔すんなって」
副社長は手をひらひらと振ってなだめると、そのまま私に向き直って話を続けた。
「哲平って、言い寄ってくる子に全然興味を示さないから、変な噂が立っていたんだよね」
「クソ海里、やめろ」
名前を呼ぶ声がさらに低くなる。
テツの鋭く冷たい視線が副社長に突き刺さり、思わず息をのんだ。
一瞬、ぴんと張り詰めた空気が漂った。
けれど、副社長は気にも留めず、くつくつと笑う。
「そんなに睨むなよ。イケメンが台無しだぞ」
この二人を見ていると、いつも副社長がテツに絡んでいる気がする。
すげなくあしらわれるのに、副社長はどこか楽しそうだ。
「悪かったって。例の話は内緒にしとくから」
副社長は肩をすくめ、人差し指を口元に当てる。
それを見て、テツは舌打ちをした。
「内緒にしとくじゃねぇよ。お前が勝手に喋り出したんだろ。これ以上、余計なことを言うな」
吐き捨てるように言うと、テツは手元のグラスに口をつけた。
「じゃ、おじゃま虫は退散するよ」
そう言って立ち上がると、副社長は笑いながら別のテーブルへ移動した。
残された私たちの間に、なんともいえない微妙な空気が流れる。
「美桜、海里の話は忘れろよ」
念を押すように言われ、よくわからないまま頷いた。
でも、変な噂ってなんだったんだろう。
気にはなったけど、それ以上考えるのをやめて、残っていた烏龍茶を飲み干した。