スーパーラブじゃ、モノ足りない! 〜仮面生徒会の舞台ウラ〜
3.
フロアと二階席の照明が落ちたと思ったら、スピーカーから音楽が流れてきた……なんか演歌調なんだけど、まさかこれ、校歌、じゃないよね?
ステージ脇のスタッフから会長と副会長にハンドマイクが手渡された。
スポットライトが二人を浮かび上がらせ、ステージ後ろの白い壁は、色鮮やかな間接照明で照らされた。
♪♪♪♪♪♪♪♪~
♠
学び舎の 門をくぐれば
幼なじみの 面影ひとつ
クラスは違えど 隣の窓に
変わらぬ笑顔 ほの灯る
♥♠
ああ… 超・愛 よ スーパー・ラブ
胸にこだまする 熱き言葉
若き命の 旅立ちの時
未来に向かい 共に歩まん
♥
見慣れぬ制服 まとう姿に
希望と不安 交差する胸よ
ハルカ遠くで鳴り響く
熱い叫びが 心を揺さぶる
♥♠
ああ… 超・愛 よ スーパー・ラブ
胸にこだまする 熱き言葉
若き命の 旅立ちの時
未来に向かい 共に歩まん
♠
カリンな花が ささやく言葉は
愛の六つの カタチとなる
♥
古き慣わし 打ち破りて
新たな時代を 築きゆくと
♥♠
ああ… 超・愛 よ スーパー・ラブ
胸にこだまする 熱き言葉
若き命の 旅立ちの時
未来に向かい 共に歩まん
♥♠
さあ、友よ 顔を上げ
明日への道を 照らそうじゃないか
この学び舎で 出会えた奇跡
胸に抱きしめ 進むんだ
~♪♪♪♪♪♪♪
「愛を超えて」
作詞作曲:桜羽 遥
二人はマイクを降ろすと、一礼した。
パラパラとまばらな拍手の中、今度こそ本当にステージを下りた。
アタシたち新入生は、不安気にお互い顔を見合わせる。
「キャー! カリンちゃん、ステキー!」
と声をあげ、推しうちわをバタバタと振っている女子生徒は……よく見ると、あの校長先生だった。
次は私歌うー! とステージに上がろうとしていたが、スタッフの生徒たちに取り押さえられていた……
と思ったら、生徒会長さんがまたステージの上に上がってきて、マイクを顔の前に上げた。
「えー、新入生の皆さま、お聞き苦しいの、聞かせちゃってごめんなさいね……これも校長先生からのコマンドで、『生徒会長みずから、思いを歌にして届けなきゃだめよって言われて……』
気がつくと、照明を落としたステージ上には、男女の生徒が立っていた。
女子生徒はアコースティックギターを持ち、男子生徒は手ぶらだ。
二人とも、体にフィットした黒いトップスに、ワイドシルエットのカーゴパンツ姿。スタイルがいいのか、無茶苦茶サマになっている。
ステージの照明が灯った。
二、三年の席からは、「キャー!」「待ってましたー」との歓声が上がる。
この二人は!
「新入生、在校生の皆さま、やっぱこの二人に出てきてもらわないと、入学式、終われないよね!」
「「「イェース!」」」
生徒会長さんがさっきと違うテンションでコールし、大きなレスポンスが返ってきた。
……そう、これ、入学式だよね。
会長さんは続ける。
「この春、合併して誕生した『生徒会&軽音部&ダンス部、正式名称は、『Supreme Empire of Xenial Youth――親しみ若者たちの超イケてる帝国――S.E.X.Y.』
な、なにそれ⁉ 生徒会と軽音部とダンス部の合併? その名前が『セクシー』? わけわかんない!
会長さん、アタシの疑問の声が聞こえたわけじゃないと思うけど、こう言った。
「そう! そのセクシーのトップアーティストにてベストカップルの二人、サエ&ヒナタから、歌とダンスで熱いメッセージをプレゼントします……二人とも二年生なので、もちろん次の生徒会役員の選挙に仲良く立候補すると言ってくれています」
そうだ、この二人、去年観に行った文化祭のステージでアタシのハートを打ち抜いたユニットだ!
二、三年の座席もそうだけど、新入生の席からも大きな歓声が上がった。
いつの間にか、ドラムとベースのバック奏者もスタンバっている。
サエと呼ばれた女子生徒がギターを肩にかけたまま、右手を上げ叫んだ。
「ハロー、アリーナ!」
「「「イェーイ!」」」
生徒たちのボルテージも上がりまくり。
歪んだカッティングギターから始まり、一気に重低音の効いたフューチャー・ベースやキレのあるダンスビートへなだれ込む。
ヒナタと呼ばれた男子生徒は、それに合わせて全身でリズムをとっていたが、激しい動きのダンスに変わり、ボーカルが始まる。
♪♪♪♪♪♪♪♪~
♥
合格ラインの 笑顔を貼り付け
誰もが 模範解答(アンサー)を探してる
教科書通りの 右倣えの春
だけど 鼓動は 誤魔化せない
(♠Hey, Welcome to the Empire!)
♠
門をくぐれば 始まるゲーム
ルクス(光)の檻を 飛び越えて
きみの「音(ホンノウ)」を 聞かせてよ
♥
「愛しなさい」と 誰かが歌う
「愛されなさい」と 誰かが強いる
だけどその「愛(カタチ)」は ひとつじゃない
計算式じゃ 測れない
(♥♠Drop the Beat!)
♥♠
さあ 飛び込め 『超・愛(スーパー・ラブ)』の渦へ
世界が 決めた 境界線を ぶち壊せ
綺麗に 収まる 方程式なんて
今すぐ 破り捨ててみせるから
ココロの 剥き出しの 声を叫べ!
~♪♪♪♪♪♪♪♪
間奏に入ってビートが加速した。
ヒナタがキレのあるロボットダンスから、サエのクールでセクシーな振りつけが加わったペアダンスへ。
♪♪♪♪♪♪♪♪~
♠
誰もが 憧れる シンメトリー
お揃いのステップ 完璧なディスタンス
だけど 瞳の奥 隠した影に
きみは まだ 気づいていない
(♥Don't blind your eyes.)
♥
差し出された 手の 温もりは
ビジネス? それとも ホンモノ?
ねえ、表舞台の 嘘の誓いより
舞台裏の 暗闇が 恋しい
♠
ここから先は 予定調和の 外側
男とか 女とか 役割を 脱ぎ捨てて
♥
きみが 誰を 想い
きみが 誰と 生きるか
♥♠
その 答えは ひとつじゃない!
(♥♠Bring it on!)
♥♠
祝福の 鐘を 鳴り響かせろ
僕らの 帝国、S.E.X.Y.へ ようこそ
たとえ これが 偽りの ステージでも
胸を 焦がす 熱さだけは 嘘じゃない
春の嵐に 巻き込まれた 友よ
自分だけの 『超・愛(超ラブ)』を 掴み取れ!
~♪♪♪♪♪♪♪♪
「方程式のウラガワ(The Backside of Formula)」
Lyrics by月城 冴 / Composed by瀬戸 陽向
ヒナタさんの激しいソロダンスと、サエさんの耳を突き刺すようなギターソロが完全にシンクロし、最後は二人が背中合わせにピタリと止まった。
体育館が揺れるほどの拍手と大歓声のなか、舞台は暗転した……
後部の保護者席は、完全にこの流れに取り残されたみたい。
「これをもちまして、入学式を終了します。新入生のみなさんは、このあと各教室で担任の先生の紹介と説明事項がありますので、来賓の皆さまが退場されたあと、指示に従って順番に移動してください」
ナゾの入学式が終わった……
生徒会と軽音部とダンス部の合併? なにそれ? アタシが『高校ステージデビュー』を果たすためには、あの……『S.E.X.Y.』に入んなくちゃだめってこと? そうすると、生徒会に立候補しなくちゃいけないってこと?
わからないことだらけだ。
アタシは急に不安になって、新入生の集団から怜の姿を探した。
彼はアタシの姿をすでに見つけていて、こっちを見つめている。
「?」
アタシが首を傾けて「わけわかんない」とテレパシーで伝えると……
「?……」
彼は一回だけ首を振り、「同じく」という答えがテレパシーを返してきた。
ひとつだけ、よくわかったことがある。
アタシは、あの二人、サエ&ヒナタさんの歌とダンスの虜になってしまった、ていうこと。
でも、それが音楽に対してなのか、人間に対してなのか、わからない。
きっと、この愛求学園でそれを探し求めていくんだと思う。
フロアと二階席の照明が落ちたと思ったら、スピーカーから音楽が流れてきた……なんか演歌調なんだけど、まさかこれ、校歌、じゃないよね?
ステージ脇のスタッフから会長と副会長にハンドマイクが手渡された。
スポットライトが二人を浮かび上がらせ、ステージ後ろの白い壁は、色鮮やかな間接照明で照らされた。
♪♪♪♪♪♪♪♪~
♠
学び舎の 門をくぐれば
幼なじみの 面影ひとつ
クラスは違えど 隣の窓に
変わらぬ笑顔 ほの灯る
♥♠
ああ… 超・愛 よ スーパー・ラブ
胸にこだまする 熱き言葉
若き命の 旅立ちの時
未来に向かい 共に歩まん
♥
見慣れぬ制服 まとう姿に
希望と不安 交差する胸よ
ハルカ遠くで鳴り響く
熱い叫びが 心を揺さぶる
♥♠
ああ… 超・愛 よ スーパー・ラブ
胸にこだまする 熱き言葉
若き命の 旅立ちの時
未来に向かい 共に歩まん
♠
カリンな花が ささやく言葉は
愛の六つの カタチとなる
♥
古き慣わし 打ち破りて
新たな時代を 築きゆくと
♥♠
ああ… 超・愛 よ スーパー・ラブ
胸にこだまする 熱き言葉
若き命の 旅立ちの時
未来に向かい 共に歩まん
♥♠
さあ、友よ 顔を上げ
明日への道を 照らそうじゃないか
この学び舎で 出会えた奇跡
胸に抱きしめ 進むんだ
~♪♪♪♪♪♪♪
「愛を超えて」
作詞作曲:桜羽 遥
二人はマイクを降ろすと、一礼した。
パラパラとまばらな拍手の中、今度こそ本当にステージを下りた。
アタシたち新入生は、不安気にお互い顔を見合わせる。
「キャー! カリンちゃん、ステキー!」
と声をあげ、推しうちわをバタバタと振っている女子生徒は……よく見ると、あの校長先生だった。
次は私歌うー! とステージに上がろうとしていたが、スタッフの生徒たちに取り押さえられていた……
と思ったら、生徒会長さんがまたステージの上に上がってきて、マイクを顔の前に上げた。
「えー、新入生の皆さま、お聞き苦しいの、聞かせちゃってごめんなさいね……これも校長先生からのコマンドで、『生徒会長みずから、思いを歌にして届けなきゃだめよって言われて……』
気がつくと、照明を落としたステージ上には、男女の生徒が立っていた。
女子生徒はアコースティックギターを持ち、男子生徒は手ぶらだ。
二人とも、体にフィットした黒いトップスに、ワイドシルエットのカーゴパンツ姿。スタイルがいいのか、無茶苦茶サマになっている。
ステージの照明が灯った。
二、三年の席からは、「キャー!」「待ってましたー」との歓声が上がる。
この二人は!
「新入生、在校生の皆さま、やっぱこの二人に出てきてもらわないと、入学式、終われないよね!」
「「「イェース!」」」
生徒会長さんがさっきと違うテンションでコールし、大きなレスポンスが返ってきた。
……そう、これ、入学式だよね。
会長さんは続ける。
「この春、合併して誕生した『生徒会&軽音部&ダンス部、正式名称は、『Supreme Empire of Xenial Youth――親しみ若者たちの超イケてる帝国――S.E.X.Y.』
な、なにそれ⁉ 生徒会と軽音部とダンス部の合併? その名前が『セクシー』? わけわかんない!
会長さん、アタシの疑問の声が聞こえたわけじゃないと思うけど、こう言った。
「そう! そのセクシーのトップアーティストにてベストカップルの二人、サエ&ヒナタから、歌とダンスで熱いメッセージをプレゼントします……二人とも二年生なので、もちろん次の生徒会役員の選挙に仲良く立候補すると言ってくれています」
そうだ、この二人、去年観に行った文化祭のステージでアタシのハートを打ち抜いたユニットだ!
二、三年の座席もそうだけど、新入生の席からも大きな歓声が上がった。
いつの間にか、ドラムとベースのバック奏者もスタンバっている。
サエと呼ばれた女子生徒がギターを肩にかけたまま、右手を上げ叫んだ。
「ハロー、アリーナ!」
「「「イェーイ!」」」
生徒たちのボルテージも上がりまくり。
歪んだカッティングギターから始まり、一気に重低音の効いたフューチャー・ベースやキレのあるダンスビートへなだれ込む。
ヒナタと呼ばれた男子生徒は、それに合わせて全身でリズムをとっていたが、激しい動きのダンスに変わり、ボーカルが始まる。
♪♪♪♪♪♪♪♪~
♥
合格ラインの 笑顔を貼り付け
誰もが 模範解答(アンサー)を探してる
教科書通りの 右倣えの春
だけど 鼓動は 誤魔化せない
(♠Hey, Welcome to the Empire!)
♠
門をくぐれば 始まるゲーム
ルクス(光)の檻を 飛び越えて
きみの「音(ホンノウ)」を 聞かせてよ
♥
「愛しなさい」と 誰かが歌う
「愛されなさい」と 誰かが強いる
だけどその「愛(カタチ)」は ひとつじゃない
計算式じゃ 測れない
(♥♠Drop the Beat!)
♥♠
さあ 飛び込め 『超・愛(スーパー・ラブ)』の渦へ
世界が 決めた 境界線を ぶち壊せ
綺麗に 収まる 方程式なんて
今すぐ 破り捨ててみせるから
ココロの 剥き出しの 声を叫べ!
~♪♪♪♪♪♪♪♪
間奏に入ってビートが加速した。
ヒナタがキレのあるロボットダンスから、サエのクールでセクシーな振りつけが加わったペアダンスへ。
♪♪♪♪♪♪♪♪~
♠
誰もが 憧れる シンメトリー
お揃いのステップ 完璧なディスタンス
だけど 瞳の奥 隠した影に
きみは まだ 気づいていない
(♥Don't blind your eyes.)
♥
差し出された 手の 温もりは
ビジネス? それとも ホンモノ?
ねえ、表舞台の 嘘の誓いより
舞台裏の 暗闇が 恋しい
♠
ここから先は 予定調和の 外側
男とか 女とか 役割を 脱ぎ捨てて
♥
きみが 誰を 想い
きみが 誰と 生きるか
♥♠
その 答えは ひとつじゃない!
(♥♠Bring it on!)
♥♠
祝福の 鐘を 鳴り響かせろ
僕らの 帝国、S.E.X.Y.へ ようこそ
たとえ これが 偽りの ステージでも
胸を 焦がす 熱さだけは 嘘じゃない
春の嵐に 巻き込まれた 友よ
自分だけの 『超・愛(超ラブ)』を 掴み取れ!
~♪♪♪♪♪♪♪♪
「方程式のウラガワ(The Backside of Formula)」
Lyrics by月城 冴 / Composed by瀬戸 陽向
ヒナタさんの激しいソロダンスと、サエさんの耳を突き刺すようなギターソロが完全にシンクロし、最後は二人が背中合わせにピタリと止まった。
体育館が揺れるほどの拍手と大歓声のなか、舞台は暗転した……
後部の保護者席は、完全にこの流れに取り残されたみたい。
「これをもちまして、入学式を終了します。新入生のみなさんは、このあと各教室で担任の先生の紹介と説明事項がありますので、来賓の皆さまが退場されたあと、指示に従って順番に移動してください」
ナゾの入学式が終わった……
生徒会と軽音部とダンス部の合併? なにそれ? アタシが『高校ステージデビュー』を果たすためには、あの……『S.E.X.Y.』に入んなくちゃだめってこと? そうすると、生徒会に立候補しなくちゃいけないってこと?
わからないことだらけだ。
アタシは急に不安になって、新入生の集団から怜の姿を探した。
彼はアタシの姿をすでに見つけていて、こっちを見つめている。
「?」
アタシが首を傾けて「わけわかんない」とテレパシーで伝えると……
「?……」
彼は一回だけ首を振り、「同じく」という答えがテレパシーを返してきた。
ひとつだけ、よくわかったことがある。
アタシは、あの二人、サエ&ヒナタさんの歌とダンスの虜になってしまった、ていうこと。
でも、それが音楽に対してなのか、人間に対してなのか、わからない。
きっと、この愛求学園でそれを探し求めていくんだと思う。


