フラワーリング
私はこのブライダルフェアが好きだ。

ドレスや花、アクセサリー。

たくさんの「好き」が集まって、ひとつの結婚式を作り上げていく。

その始まりを見られるこの時間が、たまらなく好き。

会場に足を踏み入れると、すでに準備は始まっていた。

スタッフたちが慌ただしく行き交う中。

「紬ちゃん、おはようございます!」

真っ先に私を見つけて手を振ったのは、ウェディングプランナーの神崎ひかりさんだ。

そしてここで少しだけ近況を話す。

「今日は新作ですか?」

「はい。ひかりさんに見てもらうの、ちょっと緊張します」

「ふふ。毎回言ってますよね」

ひかりさんは前と少し雰囲気が変わった。

柔らかな笑顔はそのままなのに、どこか満たされたような穏やかさがある。

きっと、大切な人がいるからだろう。

「あ、そうだ。後で写真送りますね」

「楽しみにしてます」

そう言って笑うひかりさんに、思わず私も笑ってしまった。

「――あ、いけない」

ひかりさんは腕時計に目を落とした。

「今日から新しいフラワーデザイナーさんにお願いしているんでした」

そう言って小さく笑う。

「お迎えに行かないと。また迷子になられたら困りますし」

「迷子?」

思わず聞き返すと、

「ふふ。会ったら分かりますよ」

意味深な言葉だけを残して、ひかりさんは裏へ戻っていった。

< 2 / 18 >

この作品をシェア

pagetop