煉瓦坂の少し奇妙なX'mas
 昨日というか今朝と全く同じ光景。もしこれが全部夢ならすべては虚無だ。酷く虚無的で、夢落ちを食らったみたいな気分だ。
「なんなんだよもう……」
「智ちゃんおきたよー」
 なんかまた変な声がする。またジングルベル、歌う?
「ああ、智樹。起きたのか」
 聞きなれた声に体を起こせば、バックヤードのソファの向いに環が座っている。あれ。なんでここにいるんだ。っていうかどっからどこまでが夢なんだ。あたまが随分ぼんやりする。
「環もパーティに来た……んだっけ?」
 バックヤードに向かった記憶は現実なんだろうかと思っていれば、環は嫌そうな顔をしてわかりやすくため息を吐く。
「俺はずっとここにいた。忘年会に興味はない」
「忘年会じゃなくて……」
「吾郷が店を閉める時間だといってお前をここに置いてったんだ。帰ろうかとも思ったんだが、まぁ、なんだ」
 なんだか憐みの目で見られている気がする。
「え? えーと。ありがとう。じゃぁプレゼント交換も終わったのかな」
「吾郷は『駄目になってたから代わりに配っときました』と言ってたぞ」
「そっか」
 その言葉で、結局どっと疲れた。つまり気絶している間に全てが終わってしまったんだ。クリスマス。いつのまにやら大体が俺のあずかり知らないところで。もともと激務なのはわかってたし、毎年記憶にないし、だからそんなに過度な期待はしていないつもりだった。でも。
「楽しみにしてたのになぁ」
 吾郷君には感謝しかない。けど張り詰めた糸がぷちんと切れたみたいだ。
「智ちゃん大丈夫~?」
「プレゼントあるよ~」
 プレゼント? なんだか幻聴が優しい。
「ああ、そうだった。お前の分を預かっている」
「プレゼント? ほんとに?」
 環は俺の前に靴下の袋をドンと置き、その袋は靴下っぽい形を保っていた。持ち上げてみると随分重たく勢いでふらつく。
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