傲慢すぎる警視に衛られて愛される
美憂が愛に向き直った。


「へ?」

「あの逢坂さんって人。花園さんから聞いたわよ」


美憂の目が悪戯っぽく光った。


「愛にご執心だって」


愛の顔が一気に熱くなった。


「な、何言ってるの!? ち、違うよ! どこからそういう話!」

「そうかしら」

「春だね~」


江森がのんきに言った。


「違うったら!」


美憂と江森が顔を見合わせて笑っている。


「もう! 2人とも!」


愛が声を上げるほど2人の笑い声は大きくなった。

しばらくして、美憂が愛の手をそっと取った。

笑顔のまま真剣な目で愛を見た。


「愛」

「なに?」

「幸せになりなさいよ」


愛は言葉に詰まった。


「お姉ちゃんみたいに」

「お姉ちゃん……」

「あなたはいつも誰かのことばかり。これからは自分のことも考えなさい」


愛は美憂を見つめた。

右目の下から唇の下まで走る傷跡は見えない。

9年間、ずっとそこにある傷。

それでも美憂は今、こんなにも穏やかな顔をしていた。


「……うん」


美憂が愛の手を握ったまま微笑んだ。

外からスタッフの声が聞こえてきた。


「披露宴のお時間です」


江森が立ち上がり美憂に手を差し伸べた。

美憂はその手を取って立ち上がる。

ドアへ向かいながら美憂が振り返った。


「逢坂さんによろしくね」

「え? だから違うって!」

「はいはい」


美憂はまた笑ってドアの向こうへ消えていった。

愛は控室にひとり残された。

窓の外では、フラワーシャワーの花びらが風に舞っていた。


(幸せになりなさいよ)


美憂の言葉が静かに胸の中に残っていた。
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