君が照らす人生は、いつだって温かい
義母の口から『吹奏楽』なんて単語が出てくると思っていなかったから、少し驚く。
「へえ……」
「だからこそ、なのかもしれないけどね」
義母は、味噌汁の椀を手に取りながら、
少しだけ真面目な顔になる。
「本気でやらないと、両方中途半端になるって、身をもって知ってるから」
「両方?」
「部活も勉強も。どっちも『そこそこ』だと、あとから後悔するってこと」
その言葉には、
少しだけ自分自身を責めている響きがあった。
「……そうなんだ」
「だから、歩実には〝ちゃんとやってほしい〟って、つい口うるさくなっちゃうのよね」
『口うるさい』と自分で認めるのは、義母にしては珍しい。
私は、
味噌汁の表面に浮かぶネギをぼんやり見つめながら、言葉を探した。
「……ありがとう」
またそれしか出てこなかった。
でも、今度は少しだけ、
義母の目がやわらかくなった気がする。
「とりあえず今日も、バスケ見に行くの?」
「……別に、まだ決めてないです」
「勉強するなら、ちゃんと机でね。ベッドの上だと寝ちゃうから」
「はーい」
最後だけは、少しふざけた調子で返してみた。
義母の口元に、ほんの小さな笑みが浮かぶ。
同じ食卓に座っていても、
やっぱりどこかよそよそしい。
でも、ほんの少しだけ、
その距離が縮んだような気がした。