君が照らす人生は、いつだって温かい
録音を一通り聴き終えたあと、
美由紀さんが手帳を開いた。
「で、文化祭本番まであと何日?」
「十日」
春日井先輩が、
カレンダーアプリを見ながら答える。
「本番は二曲。カバー曲と、〝今日まで生きてきたんだよ〟」
「MCは?」
「山谷さんがなんとかする」
「ちょっと待ってください」
「〝文化祭の主役はボーカル〟って暗黙の了解があるから」
「ないです」
そんなやりとりをしながら、
練習メニューが決まっていく。
「今日は、〝ノーミス通し〟を一回だけ目標にしよう」
美由紀さんが、ドラムのスツールに座る。
「一回だけ?」
「一回でいい。その代わり、一個でも誰かがミスったら、その曲は最初からやり直し」
「スパルタ第二段」
「でも、ライブ本番は一回だけだから」
その言葉に、全員の顔つきが少し変わる。
「よし、行くか」
春日井先輩が、アンプのスイッチを入れる。
ドラムのカウント。
ベースのリフ。
ギターのコード。
マイクスタンド。
『今日まで生きてきたんだよ』が、
音楽室でもう一度鳴り始めた。