君が照らす人生は、いつだって温かい
◇
家に帰ると、
義母はキッチンでシチューを煮込んでいた。
「ただいま」
「おかえり。明日、文化祭だっけ」
「うん」
「ステージは午後?」
「体育館で、二時から」
おたまでシチューをかき混ぜながら、
義母はうなずく。
「……あのさ」
鞄の中で、
ちょっと折れかけている紙を握りしめる。
「なに?」
「これ」
差し出したのは、
文化祭の『ステージ発表観覧券』。
一人一枚、
家族に渡していいと言われたものだ。
「明日、もしよかったら、来てほしい」
言い終わるまでに、
思ったより時間がかかった。
義母は、布巾で手を拭きながら、
その紙を受け取る。
「ライブハウスじゃなくて、学校の体育館ね」
「うん」
「帰りは、夕方?」
「三時には終わる」
「そう」
観覧券を指で挟んで、
しばらくじっと見つめる。
心臓の音が、
シチューのぐつぐついう音と混ざる。
「……行くよ」
あっさりと、義母は言った。
「え」
「歩実が文化祭が終わるまでは一旦やめないって言ったんだから」
少しだけ、いたずらっぽく笑う。
「〝今日まで生きてきたんだよ〟って曲、ちゃんと聴いとかないとね」
「緊張する」
「今さら?」
その突っ込みが、妙に嬉しかった。