君が照らす人生は、いつだって温かい
「……なんかさ」
春日井先輩が、不意につぶやく。
「今日、ステージで歌ってる山谷さん見てて、思った」
「なにを?」
「〝あの夜の川沿い〟で止まってた時間が、ちゃんと前に進んだなって」
胸の奥が、きゅっとなる。
「俺の左足も、バスケじゃない場所でちょっと進んだし」
足元に置かれたギターケースを、
つま先でちょんとつつく。
「山谷さんの時間も、〝迷惑かけない良い子〟じゃなくて、〝何でも言い合える娘〟として進んだでしょ」
「はい」
今日、義母と交わした言葉を思い出す。
「それに、〝春日井先輩が照らす人生は、いつだって温かい〟って、こういうことかなって」
唐突に出てきたフレーズに、
思わず顔を向ける。
「え、それ、なに」
「いや、なんか、さっき体育館で拍手浴びてるときに、ふと頭に浮かんで」
春日井先輩は、照れくさそうに笑う。
「山谷さんが歌ってるときさ」
夕焼けの色が、少しだけ濃くなる。
「体育館、ちょっと冷房効きすぎて寒かったじゃん」
「はい。客席、半袖だとちょっと寒かったです」
「でも、〝今日まで生きてきたんだよ〟ってサビ入った瞬間だけ、空気がふわっとあったかくなった気がして」
胸のあたりが、じんわり熱くなる。
「たぶん、それは俺だけじゃなくてさ。後ろで見てたお母さんとか、先生とか、よく知らない先輩や後輩とか」
体育館にいた、いろんな人の顔が浮かぶ。
「それぞれの〝今日まで〟を勝手に思い出して、〝あ、まだ続きがあるんだな〟って、ちょっとだけ安心したんじゃないかなって」
その言葉は、まっすぐ心に刺さった。