君が照らす人生は、いつだって温かい
◇
翌日、図書室で参考書を眺めていると、
不意に声をかけられた。
「それ、難しくない?」
顔を上げると、春日井先輩が、
棚の向こう側から顔を出していた。
「あ……」
声が裏返りそうになる。
「昨日のCD、どうだった?」
開口一番、音楽の話だった。
「えっと……すごく、よかったです」
語彙力のなさを自覚しながらも、
素直にそう言う。
「一番好きだった曲、どれ?」
待ってたみたいに、すぐ質問が飛んできた。
「えっと……全部好きだけど、『傘を閉じる前に』が、今のところ一番、かもです」
「やっぱそこなんだ」
春日井先輩は、嬉しそうに笑った。
「昨日、〝そこ好きそう〟って、美由紀に言ってたんだよね」
「え?そうなんですか?」
「うん。『好きな共通点で盛り上がれてよかったね』『私も話してみたい』だって」
「そんな話を……美由紀さんが」
「まあ、あいつも音楽好きだし、それに友達以外と少ないからさ」
意外な言葉だった。
夏目さんが友達少ない。
あの〝ちゃんとしてる〟感じの人も、
どこかで誰かに対してぎこちないのかもしれない。
「で、〝傘閉じ〟のどこが好きだった?」
先輩の質問は、いつも具体的だ。
「どこ、っていうか……」
歌詞カードの一節が、頭に浮かぶ。
「『今日もちゃんと、ここにいるね』ってところです」
自分でも驚くくらい、迷わず口から出た。
「昨日、何回もそこだけリピートしてて」
「分かる」
春日井先輩の目が、ふっとやわらかくなる。
「あそこさ、〝誰かに言ってる〟ようで、〝自分に言ってる〟感じもあって、いいよね」
「そうなんです。なんか、〝生きててえらい〟って言ってもらえたみたいで」