君が照らす人生は、いつだって温かい
「……そうですよね」
しばらくして、彼女は小さな声で言った。
「私には、ちゃんと分からないと思います」
まっすぐな目で。
「温人先輩が、どれだけバスケにかけてきたかとか。夏の大会がどれだけ大事だったかとか」
その正直さが、余計に胸に刺さった。
「でも」
続く言葉を、俺は聞きたくなかったのかもしれない。
「ごめん。帰って」
自分でも、
意味が分からないくらい短く、
乱暴に言っていた。
山谷さんは、一瞬だけ目を見開いた。
それから、小さくうなずく。
「……分かりました。お身体には気をつけて下さい。お邪魔しました」
椅子から立ち上がるとき、
ほんの少しだけよろけた。
病室のカーテンが、彼女の肩に触れて揺れる。
足音は、小さかった。
『来てくれて、ありがとな』
最後くらい、そう言えばよかった。
でも、その言葉は喉の奥で絡まったまま、
出てこなかった。
カーテンが閉まる音だけが、やけに大きく響いた。