台本通りの恋はしない!

頷く以外の選択肢はない。
だけど、ただで頷いてなんかやらない。


「……たとえ悪女でも、上手くやって名前が売れれば仕事はきますか?」


社長の口はニィッと大きく弧を描く。
ドンッと力強くデスクを叩いて、身を乗り出した。


「来るだろうなぁ。
お前が完璧な悪女になって、強烈な爪痕を残すほど――
世間は香月瑠奈を放っておけなくなるはずだ」


ごくりと、覚悟に喉が鳴る。
握りしめていたアオバケの企画書を、ギュッと腕に抱いた。


“仕方なく”受けるわけじゃない。


これは、私が女優として飛躍するために、
“私が望んで”受ける仕事だ。


――そういう、ことにする。


「やります!私、恋愛リアリティショー!」


仁王立ちして高く手を挙げ、啖呵を切る。


綺麗で純粋な恋を引っ掻き回す悪女・香月瑠奈。

女優として売れるために、私はその仮面を被る。


「それで、大番狂わせするくらい活躍して、大女優になります!」

「……いや、番狂わせはダメでしょう」
「そのくらいの気概でやった方がいいじゃねぇか!」

呆れる御手洗と、豪快に笑う社長を前に強がって笑ってみせる。


――こうして私は、悪女になる道を選んだ。



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