台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―
ゴールの先が見えそうになっても、紫苑は態勢を変えようとしない。
(どういうつもり?また試してる?)
どうであれ、このまま出ていくのはストーリー的にNG。
紫苑が瑠奈のスキンシップを、拒否“しなかった”。
そういう構図に見えるから。
そして、出た先にはカメラマンがいるはず。
そこが唯一、今日の私の撮れ高!
NGなんて、出させない。
最後の体力を振り絞って小走りで、伸び切った腕の分だけ距離を縮める。
トン、と紫苑の腕に体をぶつけると、紫苑がちょっと驚いて振り返った。
「ずっと手繋いでたかったのにざんねーん。
最後にいっぱいくっついとこ♡」
上目遣いで見つめながら手を離して、代わりにその腕に絡みつく。
これなら、“紫苑が嫌がっても離れなかった瑠奈”に見えるからストーリーを守れる。
火種として使われる。撮れ高にもなるはず。
ぽかんとした紫苑の口が、ゆっくりと笑顔に変わる。
「ふっ……ホント楽しいや。瑠奈ちゃん」
“私といるのが”じゃなくて、
“私が”ね。
ピキ、と引き攣りかけた口端を、笑みを深めることで誤魔化す。
おもちゃ扱いかよ。
いい性格してるわ、この人。
ザッザと靴が地面を擦る音。
よく知った話し声が、どんどんクリアになっていく。
――はぁ、ようやくゴール。
出た先には、カメラも、みんなも。
私と紫苑以外の全てが揃っていた。