台本通りの恋はしない!
ささっとメイクを済ませて、荷物をまとめる。
浴室から出ると、誰もいないリビングを通って女子フロアに続く階段を登った。
――コン、コン
一応ノックして部屋の中に入る。
個室は、2人部屋。
室内にはシングルベッド2台と、その間にオシャレなデスクが2台。
寝るだけの部屋だし、そう広くはない。
そして、私と相部屋なのは――
「あっ、……おかえりなさい、ですっ」
ひよりだ。
初対面の時の人懐っこさはどこへやら。
今は気まずそうに挙動不審にされている。
「……ん、ただいまぁ」
一応、愛想良く笑っとく。
変に冷たすぎても、初対面とのキャラブレ起こしちゃうしね。
でも、仲良くするなって言われてるし。
なにより――私も手の平返されてるのに、ニコニコしてあげられるほどお人よしじゃない。
「お風呂どうぞー?
私、今日はもう疲れたから。日記だけ書いて先寝てるね」
ベッドに座るひよりを見もせず通り過ぎて、窓に面した机に座ってそれ以上の絡みを遮断する。
「あ……はい、ありがとうございます……」
背中越しに暗い声が聞こえて、それからゴソゴソ物音がしたあと、ドアの開閉音がする。
一瞬だけ見た、窓ガラスに映ったひよりは、ちょっとだけ傷ついた顔をしていた。