台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―
「あ、……紫苑くん……」
落胆した気持ちを引きずったまま、“瑠奈”の仮面を引っ張り出す。
俯いてしまった目は、また爽真を見るタイミングを失った。
「その反応。また忘れてたでしょ。
ひどいなぁ、2回目だよ?ほんとに俺のこと好きなの?」
軽快な笑い声とともにからかい口調で出た言葉に、ぴく、と肩が反応する。
だめだ、こんなことで揺さぶられちゃ。
堂々と、“瑠奈”として打ち返さないと。
「そんなことないよぉ?ちゃんと覚えてたもん。
だって瑠奈――」
「瑠奈は俺に用があって来たんだと思うけど」
続く言葉を遮るように、紫苑の真後ろで爽真が静かにそう言った。
その声色は今まで聞いたことがないくらい冷たくて、淡白で。
薄い刃物みたいな危うさを孕んでいた。
「“忘れてた”って、そういうことだろ?帰れよ」
紫苑の顔から、すっと笑顔が消える。
長いまつ毛がお日様のような蜂蜜色の瞳を翳らせて、爽真に視線を刺し返した。
「瑠奈ちゃんが、爽真に用があって降りて来たって認めるの?
夜の密会やってたって、認めることになるけど」