台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―
薄い壁一枚向こうに、よく知った楽しそうな話し声。
静まり返った狭い空間が、より際立った気がした。

ちら、と美玲が再びこっちを窺う。
だから私も、いつもより霞む目をチラリと向けた。

「……ねぇ、本当に具合……」
「大丈夫だってばぁ」

本気で心配しているか細い声を、甘ったるいお砂糖ボイスで遮断する。

美玲に心配されればされるほど、私の道ならぬ恋への罪悪感が刺激される気がするから。

「しつこい女の子はモテないよ〜?美玲ちゃん」

なんて冗談めかした嫌味を言いながら、これ以上の追求から逃れるように目を逸らしてドアノブに手をかける。

それでも背中に気遣わしげな視線が刺さるから――
たまらずポツリと呟いた。

「爽真のどこを好きになったの?」
「えっ?」

素の声で言ってしまったのは、無意識。
美玲が虚を突かれたみたいに固まって、動揺に目を見張っていた。

(――あれ?今……何を口走った?)

自分自身も驚いて、ダルい一辺倒だった意識が急に叩き起こされる。
この場の上手い挽回法が思いつかなくて、とりあえず声色を調整し直した。

「なーんてね♡冗談冗談♡」

美玲の顔を見るのが怖くて、一息にドアを開けてホールに出てしまう。

もうすでに集まっていたみんなの輪から、彩加が「遅い」と一喝してきた。

「ごめんなさぁい。でも、瑠奈がビリじゃないよねぇ?」

なんて開き直りながら、ミーティングが始まる輪の中に加わる。

そこには爽真も当然いるけど、今日は輪をかけてその顔を見ることができなかった。


――少しして、申し訳なさそうに美玲も出てくる。

「ごめんなさい、遅れました……」

「いやいや、セーフっすよ!」
「平気?なんか忘れ物あったとか?」

すかさずフォローする陸・彩加。
美玲はそれを困ったように笑って受け止めながら、ちらちらと私の方を見てくる。

「あっひどーい!瑠奈の時と態度違くない〜!?」

変な空気にならないよう、間髪入れずに噛み付く私。

「日頃の行いじゃない?」

「瑠奈、日頃からいい子だもんっ」

「あの、オーナーさんもスタッフさんも困ってる。
そろそろミーティング始めていい?」

くだらない口喧嘩を、遠慮がちに大和が止める。

――そんなコントのようなやりとりが飛び交うのを、紫苑は苦笑いして、爽真は他人事のように聞いている。

ただ、ほんの数秒だけ――
爽真は私の様子を観察するように、視線を送っていた。
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