台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―
目が合った瞬間、できた間に少しの緊張感。
美玲もなんとなく空気が変わったのを察知して、きゅっと唇を引き締めた。
「あのね、私も爽真のことが好きなの」
素の声と言葉で、そう告げる。
綺麗な美玲の瞳が丸くなって、固まって――
それから少ししてふっと伏した。
「……うん。なんとなくそう思ってた」
美玲の口元は小さく弧を描いているのに、笑っていない。
けれど予想外の答えに驚いている私に気付くと、意図して微笑みを作った。
「私ね、ずっと爽真くんを見てきたの。
だから、瑠奈ちゃんを見てる爽真くんが苦しそうだったのが悲しくて……私ならそんな顔させないのにって思ってた」
胸に重く、罪悪感がのしかかる。
美玲の言っていることは、多分正しい。
自分の恋心をちゃんと認めて、爽真と向き合う。
それでいてなおも私は、爽真とどうなりたいか、ちゃんと答えを出せていないから。
「……ごめん、それでも……」
「でも、違ったね」
私の言葉を遮る声は、どこか潔くて芯がある。
綺麗に微笑む美玲の表情には、決意と、納得と、ほんの少しの悲しみが滲んでいた。
「苦しんでしまうくらい、爽真くんは瑠奈ちゃんが大切だったんだよね」
膝に置かれた美玲の手が、スカートを握って少し震える。
それでも強い瞳は私をずっと見続けている。
「それなら、“他の誰か”じゃ代われない。
でも、中途半端なままにするなら――私も、諦めないからね」
罪悪感と切なさに傾いていた感情を、ぶつ切りにする力強さ。
素で呆気に取られてしまった私を見て、美玲がクスリと可憐に笑う。
――この子、強い。
思っていたよりずっと。
敵わないって思っていたけど――
“か弱い”とか“守ってあげたくなるヒロイン”とか、私はどこで勝手に、美玲を侮っていたのかもしれない。
(ひよりといい美玲といい。
ここにきて新たな一面に驚かされることばっかりだわ)
「お大事に」とずいぶんスッキリとした顔をして部屋を出ていく美玲に、肩の力が抜ける。
「あ。冷めてる……」
食べかけの雑炊を口にして、なんとも表しがたい複雑な気持ちになった。