異存
それに続けて彼女が言う。
「きっとこれからも私は裕也を不安にさせちゃうこといっぱいあると思う。
気をつけるけどね?」
彼女はクスッと笑って続ける。
「今回はこうやって間違った方を選んじゃったけど、次は私がちゃんと正しい方に導くから。
だからもう泣かないで。ずっとそばにいるよ。」
なんで、なんでこの子はこんなにも優しいのだろう。お人好しにもほどがあるよ。
そんなこと言われたら俺が離れられなくなるって知ってるくせに。本当にお人好し。
「...うん。」
幼い子供のような声だった。甘えるような、それでいてどこか消え入りそうな声。
「....私ね、裕也に救われたんだよ。私達が始めて出会った場所。覚えてる?」
確か...、紺野病院だった気がする。
「紺野病院。私がもうすぐ手術っていう時期に裕也が入ってきたの。
裕也も腫瘍の手術とかなんとかで同じ病室に入院で、私怖かったの。手術。」
そうだ、俺も手術で...。もうすっかり忘れそうになってた。
「その時、きっと裕也も怖いのに毎日私のベットまで来てくれて手を握って、大丈夫だよ。って。」
いつも夜に声を殺して泣いている桜良をどうにか笑顔にしたくて毎日やってたっけな。
「本当に嬉しかった。あぁ、この子は強いんだなって思った。私あの時からずっと裕也のこと好きだったんだよ。知らなかったでょ。」
俺が、強い?そんなことない。俺はいつだって弱くて泣き虫で。
...でもこのこの前でだけはいいとこ見せようって頑張ってたな。懐かしい。
っていうか今なんて...?
「え.....?」
桜良が俺よりも先に?嘘だ。だってそんな素振りは...
そんなことを考えていると唇に柔らかいものが触れた。
羽のような優しいキス。でも、それがどうしようもなく暖かくて心地よかった。
「ん...。」
俺の頬を優しく撫でてニコっと笑った。
「裕也が私を救ってくれたんだよ。」
それに少し拗ねた子供のように言った。
「そんなことない。俺のほうが救われたし。」
すると、ぎゅっと抱きしめられた。
「んぅ...?」
耳元で桜良の低い声が響いた。
「共依存だね。」
ビクッとした。初めて聞いた彼女の低い声。
嗚呼、もう本当に。
「大好き...。」
彼女は恍惚とした顔で俺の顔を見つめて笑った。
「私も...。」
彼女は獲物を捉えた猛獣のような目をしていた。


本当の依存者がどっちなのかはもう誰にも分からない。
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