銀白虎

苦しくて





バッ


「…つか、」



呆気なく消えていく温もり。




さっきは勝手に引き寄せたくせのに、今度はきまぐれに突き放すんだ…。



蓮見くんはいつも突然だ。前触れもなく。



ずるい。今までのあたしなら、文句のひとつも言ってやっていたのに…。



今は、言う気にもなれない……。





「…やっぱ、お前の顔見てると苛々する。」



は!?


人の顔を見つめてくると思ったら、なによそれ……。



苛々するやつをあんたは抱きしめんのかいっ!


って、心の中で悪態をつくけど…。




やっぱりあたしって、嫌われてるのかな…?




ズキッと、胸が痛む…。





なんだ…あたし。

こんなの、あたしらしくない。きもちわるい。




「…すいませんね、苛々させて。」



たぶんこれは、あたしなりのギリギリの意地なんだろう。





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