銀白虎






「まあ、飛鳥の気持ちはわからないけどさ」


いきなり黙ってしまったあたしに気を遣ってか、繕うように口にした。





「あ…うん」


それにも曖昧な返事しか返せず。




「…いつか、出来たときは教えてよ」



優しい亜美の笑顔を見ていたら、胸が苦しくなって………


自然と、口から零れ落ちていた。




――――居ないよ。






その時の亜美の笑顔は、何処か寂しそうで。


…あたしには、大きな罪悪感が残った。






でも、もしかしたら……一生言えないかもしれない。



蓮見くんだよ、なんて。


今更言えるわけがない。


ずるいあたしは、隠し続けるんだと思う。




大好きな亜美に、いっぱい隠しごとをしている自分が、とてつもなく嫌になった。






< 374 / 589 >

この作品をシェア

pagetop