私だけに見せる、彼の独占欲。
第5話 「言えない、のに」
――私、主任のこと、好きになってる。
認めた瞬間から、全部が変わった。
視線も、声も、仕草も。
“たまたま”が、全部特別に見えてしまう。
そして今日。
午後の業務がひと段落して、
休憩室に入ったら――
いた。主任。
コーヒーを淹れている横顔。
心臓が、一気に早くなる。
「……お疲れ」
「お、お疲れさまです」
沈黙。
……今だよ、私。
一緒に帰りませんかって、言えるタイミング。
喉まで出かかる。
でも。もし断られたら?
黙ったまま、紙コップにお湯を注ぐ。
沈黙が、少し長い。
主任がちらっと私を見る。
「元気ないな」
「そ、そんなことないです」
嘘。たぶん、バレてる。
主任はコーヒーを一口飲んで、
少しだけ視線を落とした。
それから、ぽつり。
「……ちょっとお腹空いた」
え?
「帰り、付き合って」
一瞬、意味が追いつかない。
「え……?」
「ラーメンでも食べて帰る」
さらっと言う。
でも、視線は逸らさない。
「嫌?」
その言い方、ずるい。
「い、嫌じゃないです」
反射みたいに答えてしまった。
主任が小さく笑う。
「よかった」
その一言が、やけにやさしい。
時間差で支店を出る。
夕方の空気。
スーツのままなのに、少しだけ軽い。
待ち合わせ場所に、見慣れた後ろ姿。
小さく息を整えて、近づく。
歩き出すと、主任が言った。
「最近さ」
「はい」
「俺の前で、ちょっと距離取ってない?」
ぎく。
「と、取ってないです」
「嘘」
即答。
「前のほうが素直だった」
胸の奥が、きゅっとなる。
「……意識してるからです」
言ってしまった。
あ。終わった。
足が止まりそうになる。
主任が歩幅をゆるめる。
「何を?」低い声。
逃げられない。
「……主任を」
少しの沈黙。
自分の心臓の音だけがうるさい。
主任が、ゆっくり息を吐く。
「……やっと、言ったな」
「え?」
「俺も、ずっと我慢してた」
頭が、真っ白になる。
「部下だし。新人だし。立場あるし」
一歩、近づく。でも、触れない。
「でもさ」
まっすぐな目。
「好きなもんは、仕方ない」
………。
「……同じ?」
かすれた声で聞く。
主任は、少しだけ照れたみたいに笑って。
「同じ」それだけ。
それだけなのに、胸がいっぱいになる。
ラーメン屋の暖簾が見えてくる。
主任が、小さく言う。
「ちゃんと順番守るから」
「順番?」
「大人の」
その言い方が、あったかい。
「だから安心して好きになれ」
涙が出そうになる。
やっぱり――
私、主任のこと、好きになってる。
そして、
主任も、同じ。
たぶん、ここから変わる。
認めた瞬間から、全部が変わった。
視線も、声も、仕草も。
“たまたま”が、全部特別に見えてしまう。
そして今日。
午後の業務がひと段落して、
休憩室に入ったら――
いた。主任。
コーヒーを淹れている横顔。
心臓が、一気に早くなる。
「……お疲れ」
「お、お疲れさまです」
沈黙。
……今だよ、私。
一緒に帰りませんかって、言えるタイミング。
喉まで出かかる。
でも。もし断られたら?
黙ったまま、紙コップにお湯を注ぐ。
沈黙が、少し長い。
主任がちらっと私を見る。
「元気ないな」
「そ、そんなことないです」
嘘。たぶん、バレてる。
主任はコーヒーを一口飲んで、
少しだけ視線を落とした。
それから、ぽつり。
「……ちょっとお腹空いた」
え?
「帰り、付き合って」
一瞬、意味が追いつかない。
「え……?」
「ラーメンでも食べて帰る」
さらっと言う。
でも、視線は逸らさない。
「嫌?」
その言い方、ずるい。
「い、嫌じゃないです」
反射みたいに答えてしまった。
主任が小さく笑う。
「よかった」
その一言が、やけにやさしい。
時間差で支店を出る。
夕方の空気。
スーツのままなのに、少しだけ軽い。
待ち合わせ場所に、見慣れた後ろ姿。
小さく息を整えて、近づく。
歩き出すと、主任が言った。
「最近さ」
「はい」
「俺の前で、ちょっと距離取ってない?」
ぎく。
「と、取ってないです」
「嘘」
即答。
「前のほうが素直だった」
胸の奥が、きゅっとなる。
「……意識してるからです」
言ってしまった。
あ。終わった。
足が止まりそうになる。
主任が歩幅をゆるめる。
「何を?」低い声。
逃げられない。
「……主任を」
少しの沈黙。
自分の心臓の音だけがうるさい。
主任が、ゆっくり息を吐く。
「……やっと、言ったな」
「え?」
「俺も、ずっと我慢してた」
頭が、真っ白になる。
「部下だし。新人だし。立場あるし」
一歩、近づく。でも、触れない。
「でもさ」
まっすぐな目。
「好きなもんは、仕方ない」
………。
「……同じ?」
かすれた声で聞く。
主任は、少しだけ照れたみたいに笑って。
「同じ」それだけ。
それだけなのに、胸がいっぱいになる。
ラーメン屋の暖簾が見えてくる。
主任が、小さく言う。
「ちゃんと順番守るから」
「順番?」
「大人の」
その言い方が、あったかい。
「だから安心して好きになれ」
涙が出そうになる。
やっぱり――
私、主任のこと、好きになってる。
そして、
主任も、同じ。
たぶん、ここから変わる。