まだ恋とは呼べない距離で
【番外編】兄妹
ママと妹と三人で、電車で出かけた帰り道。
「グスッ……グスッ……」
「ほら、理緒。電車来たから乗るわよ」
まだ五歳になったばかりの妹は、疲れて泣いてしまった。
ママも、それは分かっている。
でも、荷物が多くて抱っこできないんだ。
電車のドアが開き、中から人が降りてくる。
全員が降り終わるのを確認して、空いている席を探す。
――ここだ!
三席並んで空いた席に、達也は素早く座る。
その瞬間、両隣に知らない人が座った。
――すわられちゃった!
ドアの方を見ると、まだグズったままの理緒と、それにオロオロするママが立っていた。
「理緒、ほら……お兄ちゃんの近く行こう」
「グスッ……グスッ……」
ママと理緒がゆっくり近づいてくる。
「……理お、ここすわる?」
達也は席を立って、理緒に譲る。
「グスッ……グスッ……」
理緒は首を振って、座ろうとしない。
「理緒、疲れたんでしょ? 座りなさい」
「うぁぁぁ……!」
ママに強く言われて、理緒は泣き出してしまう。
ママは困ったように眉を下げた。
「……達也、とりあえず座ってなさい」
「……はぁい」
達也は座り直し、理緒とママの様子をうかがう。
「理緒? 疲れたんじゃないの?」
「……グスッ……」
理緒は何も答えない。
「……」
ママは困った顔のまま、黙ってしまった。
「……理お、ここすわる?」
達也は自分の膝をぽん、と叩き、腕を広げる。
理緒は顔を上げ、達也の顔を見る。
「理お?」
達也は優しく笑いかける。
理緒は、ぐしゃぐしゃに泣いた顔のまま、にこっと笑った。
そして小さな体で椅子によじ登る。
達也が理緒を引っ張り上げると、理緒はくるっと向きを変えて、達也の膝にちょこんと座った。
達也は、理緒が落ちないように後ろから支える。
「達也、ありがとう」
ママが、ほっとした顔で言う。
なんだか、ママだけじゃなくて、電車の中の人たちにも見られている気がして、達也は恥ずかしくなる。
達也は理緒を支える手にぎゅっと力を入れ、理緒の背中に隠れる。
――理おのせなか、あったかい……。
「おにぃちゃん、ありがと」
「グスッ……グスッ……」
「ほら、理緒。電車来たから乗るわよ」
まだ五歳になったばかりの妹は、疲れて泣いてしまった。
ママも、それは分かっている。
でも、荷物が多くて抱っこできないんだ。
電車のドアが開き、中から人が降りてくる。
全員が降り終わるのを確認して、空いている席を探す。
――ここだ!
三席並んで空いた席に、達也は素早く座る。
その瞬間、両隣に知らない人が座った。
――すわられちゃった!
ドアの方を見ると、まだグズったままの理緒と、それにオロオロするママが立っていた。
「理緒、ほら……お兄ちゃんの近く行こう」
「グスッ……グスッ……」
ママと理緒がゆっくり近づいてくる。
「……理お、ここすわる?」
達也は席を立って、理緒に譲る。
「グスッ……グスッ……」
理緒は首を振って、座ろうとしない。
「理緒、疲れたんでしょ? 座りなさい」
「うぁぁぁ……!」
ママに強く言われて、理緒は泣き出してしまう。
ママは困ったように眉を下げた。
「……達也、とりあえず座ってなさい」
「……はぁい」
達也は座り直し、理緒とママの様子をうかがう。
「理緒? 疲れたんじゃないの?」
「……グスッ……」
理緒は何も答えない。
「……」
ママは困った顔のまま、黙ってしまった。
「……理お、ここすわる?」
達也は自分の膝をぽん、と叩き、腕を広げる。
理緒は顔を上げ、達也の顔を見る。
「理お?」
達也は優しく笑いかける。
理緒は、ぐしゃぐしゃに泣いた顔のまま、にこっと笑った。
そして小さな体で椅子によじ登る。
達也が理緒を引っ張り上げると、理緒はくるっと向きを変えて、達也の膝にちょこんと座った。
達也は、理緒が落ちないように後ろから支える。
「達也、ありがとう」
ママが、ほっとした顔で言う。
なんだか、ママだけじゃなくて、電車の中の人たちにも見られている気がして、達也は恥ずかしくなる。
達也は理緒を支える手にぎゅっと力を入れ、理緒の背中に隠れる。
――理おのせなか、あったかい……。
「おにぃちゃん、ありがと」