Please let me hear your voice-君の声を聴かせてー
仕事帰りの駅前は夕方の光がゆっくりと沈んでいく時間帯で、昨日の痛みはまだ胸の奥に残っていた。
——婚約者。
——避けてしまった。
——どうして、こんなに苦しいんだろう。
そんな思いを抱えたまま、柚歩は人混みの中を歩いていた。
そのとき、
「……葉山さん?」
名前を名乗っていないのに呼ばれたことに動揺して振り返ると、昨日よりも少し顔色の戻った彼女が立っていた。
「あの、なんで名前を知ってるんですか?」
「琉生君に聞いたの」
くったくなく笑顔を振りまく優海に、柚歩は圧倒された。
——あ、やっぱり婚約者なんだ。
胸の奥がきゅっと痛んだ。
「ご挨拶が遅れて申し訳ありません。私は、門倉優海です。葉山さんはなんてお名前なんですか?」
少しかしこまった言い方で促され、柚歩は緊張して少し震える声で答えた。
「葉山柚歩です。」
「堅苦しいの嫌いだから、柚歩ちゃんって呼んでいい?私は優海でいいよ」
優海はふわっと笑い、続けた。
「あの時ほんとうにありがとう。前から少し体調悪いなと思ってたら、病院で頭位眩暈症だと診断されて……納得した。ねえ、少しだけ……歩いてもいい?」
押しつけがましくなく、ただ“お礼を言いたい”という気持ちだけが滲んでいて、柚歩は頷いた。
——婚約者。
——避けてしまった。
——どうして、こんなに苦しいんだろう。
そんな思いを抱えたまま、柚歩は人混みの中を歩いていた。
そのとき、
「……葉山さん?」
名前を名乗っていないのに呼ばれたことに動揺して振り返ると、昨日よりも少し顔色の戻った彼女が立っていた。
「あの、なんで名前を知ってるんですか?」
「琉生君に聞いたの」
くったくなく笑顔を振りまく優海に、柚歩は圧倒された。
——あ、やっぱり婚約者なんだ。
胸の奥がきゅっと痛んだ。
「ご挨拶が遅れて申し訳ありません。私は、門倉優海です。葉山さんはなんてお名前なんですか?」
少しかしこまった言い方で促され、柚歩は緊張して少し震える声で答えた。
「葉山柚歩です。」
「堅苦しいの嫌いだから、柚歩ちゃんって呼んでいい?私は優海でいいよ」
優海はふわっと笑い、続けた。
「あの時ほんとうにありがとう。前から少し体調悪いなと思ってたら、病院で頭位眩暈症だと診断されて……納得した。ねえ、少しだけ……歩いてもいい?」
押しつけがましくなく、ただ“お礼を言いたい”という気持ちだけが滲んでいて、柚歩は頷いた。