エリート外交官の完璧なる偽装結婚 ……のはずが旦那様は私を溺愛しているみたいです?!
 男たちと、仁奈の友人だった千穂という女は警察に連行され、俺たちも被害届を出すために警察へ出向いた。

 手続きを終え、帰ろうとしたところで、仁奈が家出していたことを思い出す。

「送るよ」

 どこへとは言えなかった。本当は俺と一緒に帰ってほしい。でも仁奈がそれを望むかどうか。顔を下げて頷く仁奈から表情は読み取れない。

 警察署の駐車場に停めていた車へ、仁奈を助手席に乗せる。カーナビに目的地を入れようとして手を止めた。

 隣に座る仁奈を見やると、どこか泣きそうな顔で俺の指を見つめているように見えた。

「……帰る前に寄り道しないか?」

 自分らしくない、逃げの提案。どうだろうと思ったが、仁奈は「はい」と頷いてくれた。

 ゆっくり話せるところ、あまり騒がしくないところがいい。そう思ってイギリス大使館横の公園を行き先にした。

 春は桜の名所と知られ夜も花見客で賑わうが、冬の今は桜並木も裸で人気がない。自動販売機で缶コーヒーと仁奈が好きなミルクティーを買って、池を眺められるベンチに並んで腰掛ける。

 缶コーヒーで手を温めながらどう切り出そうか悩んだ。仕事では言葉が即座に出てくるのに、仁奈の前ではうまくいかない。彼女に嫌われたくない。俺の思考はそればかりだ。

「そういえば、どうして私があのバーにいるってわかったんですか?」

 寒々しい池を眺めながら、仁奈がポツリと呟いた。

 正直に白状すると引かれるだろうからためらわれるが、話さないと説明がつかない。
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