本気のキスで甘くとかして
 自分に自信のある賢人にしては珍しく、自分の送った内容に落ち度しか感じられず、苦悩した。取り消せるなら、このメッセージを取り消したいとさえ思った。
 異性に対して、自分はもっとなんでも容易にこなせたはずだ。年下の、しかも大学生なんて未成熟な相手など、いつもの自分だったら簡単に籠絡できたはずだ。それなのに今は、こんなにも自分の態度に不安を覚え、自信をなくしている。

(それだけこいつが……ほかの女と違うのか)

 先日の合コンで、女性幹事の後輩であるという河合は、あからさまに自分に秋波を送ってきた。そりゃそうだ。顔もよければ学歴もよく、おまけに運動神経も収入もいい。そんな優良な男を放っておくはずがない。柚子でないほうの女子大生も、自分に向けてきた視線の回数は、それはそれはわかりやすいほどに多かった。女性幹事の吉岡も、幹事という立場上、多少遠慮はしていたが、抜け目なく賢人に連絡先を聞いてきた。
 だが、柚子だけは違った。柚子だけは男性側にも女性側にも等しく話しかけ、気遣い、場の和を保つことだけに気を向けていた。顔や学歴、収入で相手を値踏みするようなことはしなかった。

 そういう相手だと知っているからこそ、自分はこんなにも、いつものようなアプローチができないのだ。それどころか、こちらにまったく気がない柚子の興味を引きたくて、こんなにもやきもきしてしまう。自分の言動が不快に受け取られていないか、必要以上に心配してしまう。
 なぜなら、柚子に嫌われたくないから。誰に対しても平等で真面目な彼女に、特別な眼差しでこちらを見てほしいからだ。

(ガキかよ、俺は)

 賢人はスマホを、テーブルの上に放り投げるように置いた。それから、目を閉じて昼寝でもしようかと試みてみる。土曜日とはいえ急な仕事で呼び出されることはよくあることなので、休めるうちに休んでおくことが肝要だ。
 しかし、手放したスマホがぶるりと震える音がして、賢人は急いで姿勢を正し、スマホを手に取った。

〈間違ってはいなかったんですね。えっと、大熊さんとお会いすることはできますが、私、あまりお金がなくて……。できれば、あまり高くないお店とか、お金のかからない場所だと嬉しいのですが……〉
(ああ……)

 柚子から届いた返事。二つ目のメッセージ。それを読んだ賢人ははっきりと感じた。
 いま流れているこの同じ時間に、彼女が自分のことを考えてメッセージを送ってくれたこと。そうして彼女とやり取りができること。今度は二人で会えるかもしれないこと。合コンのあの場で、特定の男性を特別扱いすることなく、男性側も女性側も、あくまでも全員が気持ちよく過ごせるようにとそのことだけに腐心していた彼女が、今は自分だけを見てくれていること。
 それらを、こんなにも嬉しく思う。自分は間違いなく、柚子を好ましく感じている。「恋をしている」と断言するにはまだ弱いが、自分の心は柚子とのつながりをたしかに喜んでいた。

(会ってくれるってことは、脈があるのか? いや、たぶん違うな。あの日のメンツのつながりとかを考えて、角が立たないように一度くらいは誘いに乗ってくれているだけか……。それに、金か……。全部俺が奢るから問題ない、と言うことは簡単だが……それを簡単に了承するような性格じゃないだろうな)

 それからも、賢人は考え続けた。
 柚子の言動の意図を。少しでも柚子に好ましく思われるように、自分はどう振る舞えばいいのか。どう接していけば、彼女の意識や視線を独占できるのか。どんな自分なら、真面目な彼女にふさわしいのか。
 柄にもないとは思いつつも、そうして柚子のことで頭を悩ませることは、少しも面倒くさくは感じなかった。返信の内容にしろ、デートプランにしろ、柚子に向ける言葉にしろ、何度考えても最良の答えだとは思えず、はがゆく感じたことも多かったが、柚子の心を自分に向けさせたい――その一心だった。


   ◆◇◆◇◆


「やっ、だめ……そこっ」

 知っている。
 入り口のこの浅いところの、少し左側の上あたり。そこを意識しながらゆっくりと肉棒を出し入れすると、柚子の両足はかわいく震える。快感を覚えるスポットの一つなのだろう。
 だから、駄目と言われても賢人はやめなかった。柚子とからめた手をシーツに抑えつけるようにして自重を支え、にちゅ、ぬちゅ、と一定のリズムで腰を引いては柚子の女園に水音を立てた。

「あ、あぁっ……んぅ……っ」

 柚子は口を半開きにして、震えるような嬌声を上げる。
 初めて彼女と体を重ねてから二カ月弱。かわいい淫核でイくことならできるが、柚子はまだ、膣内(ナカ)イキをしたことがない。
 これまでの賢人は、女性側の快感だとかイったかどうかだとか、それらを丁重に気にすることはしなかった。何人かいたセフレたちは皆、賢人にとってはただの性欲発散相手にすぎず、彼女たちの満足感など、自分の知るところではない。大事なのは自分が気持ちいいかどうか、それだけだった。
 だが、柚子は違う。本気で好きになったこの女の子には、うんと気持ちよくなってほしい。自分のこの体に――この淫乱な肉根に蹂躙される心地よさに、夢中になってほしい。

「気持ちよさそうだな、柚子? こっちもさわってやろうか」

 賢人は意地悪な表情になると、柚子のむき出しの乳首を舌の表面全体でぺろりと(ねぶ)る。それから、桜色のその粒を口の中に含み、口内の粘膜で包みながらやさしく舐めしゃぶった。

「やっ、だめぇ……っ!」
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