紫陽花の短編集物語#4
未来からあなたを守る
未来からあなたを守る 第1話 未来からあなたを守る 第話
【シーン1:放課後の屋上】
夕陽のオレンジが屋上を染めている。
音々は風に長い髪を揺らしながら、欄干にもたれかかっている。
音々(心の声)晴斗くん……今日も目が合わなかったな。こんなに好きなのに、届きもしない。
その瞬間——
ビュッ、と空気がねじれるような音がする。
音々「……え?」
光が消えたあと、そこにひとりの女の子が立っていた。
音々と同じ顔。
でも表情は少し大人で、影を含んだ目をしている。
未来の音々「久しぶり、って言ったほうがいいのかな。……いや、初めましてか。」
音々「えっ……なに?ドッキリ?双子?え、こわっ……!」
未来の音々は深くため息をつく。
未来の音々「いい?よく聞きなさい。あんたの旦那、蓮だよ。」
音々「…………は???」
【シーン2:衝撃と否定】
音々は思わず後ずさる。
音々「いやいやいや!ちょっと待って!蓮とは幼なじみだけど、そういうのじゃないし!わたしは晴斗くんが……!」
未来の音々「……そう、わかってる。今のあんたは晴斗が好き。だけど——その選択が未来をめちゃくちゃにする。」
音々「未来って……そんな大げさな……」
未来の音々「大げさじゃない。あんたが晴斗を選んだせいで、“私は”ひどい未来を生きた。」
音々「……!」
未来の音々「蓮はね、あんたが思ってるよりもずっと、ずっと大切にしてくれる人。晴斗とは違う。」
【シーン3:去り際の言葉】
未来の音々が薄く光をまとい始める。戻らなければならない時間が迫っている。
未来の音々「これだけは言っておく。晴斗はやめなさい。あの人を選んだら——後悔しかしない。」
音々「待って!どういうこと!?晴斗くんが何を——」
未来の音々「自分の目で確かめなさい。もうすぐ“本性”が見えるから。」
光が一瞬強くなり、未来の音々の姿はかき消える。
屋上にひとり残され、音々は呆然とつぶやく。
音々「……未来のわたしが言ったこと、信じられないよ。
だって……わたし、晴斗くんが好きなんだもん。」
カメラが遠ざかり、夕陽の中に音々が小さく立ち尽くしている。
未来からあなたを守る 第2話 止められない気持ち
【シーン1:翌朝・通学路】
音々はイヤホンを片耳だけつけて歩いている。
昨夜の出来事が頭の中で何度も反芻されていた。
音々(心の声)未来から来たわたしが、蓮が旦那って……何それ。変な夢みたい……。でも……晴斗くんのこと、好きなのは変わらない。
そのとき、背後から自転車のブレーキ音がする。
蓮「おーい、音々!危ないって!」
蓮が音々の横で自転車を止める。
心配そうな眼差し。
蓮「今日ぼーっとしてるな。なんかあった?」
音々「な、なんでもないよ!考え事してただけ!」
蓮「ふーん……。困ったら言えよ?」
蓮の言葉はやわらかくて、あたたかい。
だけど音々は首を振る。
音々(心の声)だめ……優しくされると揺れちゃう。わたしが好きなのは晴斗くんだけ。
【シーン2:昼休み・教室】
晴斗の周りには今日も女子が何人も集まっている。
笑い声、軽いノリ、キラキラした雰囲気。
音々は席から遠く彼を見つめてしまう。
音々(心の声)こんな人が、わたしを振り向いてくれるなんて、やっぱり奇跡なんだよね……。
晴斗がふとこちらを見た。
目が合う。
音々「あ……」
晴斗は微笑む——
……が、すぐに隣の女子に肩を寄せて話し出す。
音々(小さく)「……そっか。」
蓮が音々の机の横からひょっこり顔を出す。
蓮「おい、ため息深すぎ。肺が凹むぞ?」
音々「べ、別に!」
蓮「また晴斗か。」
図星すぎて言葉が詰まる音々。
蓮は小さく息を吐き、真剣な顔になる。
蓮「……音々。あいつ、やめとけよ。」
音々「どうしてそんなこと言うの?」
蓮「理由言ったら、たぶん泣く。」
音々「は?なにそれ……!」
イラッとしながらも、胸の奥がざわつく。未来の音々の言葉とリンクしてしまう。
【シーン3:放課後・校舎裏】
音々は勇気を振り絞り、ひとりで晴斗を呼び出した。
晴斗「で、話って何?」
音々「あの……わたし、晴斗くんのこと……」
緊張で声が震える。
晴斗はスマホをいじりながら言う。
晴斗「告白?」
音々「……っ!」
晴斗「そういうの、俺は基本、軽く付き合う主義だからさ。重いの無理。それでもいいなら……まあ、いいけど?」
彼は顔をほとんど上げない。
音々(心の声)それ……付き合うって言うの?わたしって……ただの、暇つぶし……?
でも、どうしても諦められない。
音々「……いい。それでも、わたし晴斗くんが好きだから。」
晴斗はやっと笑う。
晴斗「じゃ、今日からよろしく。連絡は気分で返すし、会うのも俺が暇なときだけな。」
音々「……うん。」
去っていく晴斗。その後ろ姿を、音々は胸を押さえながら見送る。
【シーン4:夜・ベッドの上】
スマホを握りしめながら、未来の音々の言葉が蘇る。
未来の音々『晴斗はやめなさい。後悔しかしない。』
音々(心の声)……でも。好きなんだよ……どうしようもない。
画面に晴斗からの通知が届く。
——“明日ヒマなら会う?”
音々は顔を明るくし、小さく笑った。
音々「晴斗くん……!」
その笑顔の裏で、未来は静かに軋み始めていた。
未来からあなたを守る 第3話 告白と違和感
【シーン1:放課後・校門前】
音々は胸を弾ませながら晴斗を待っている。
昨日、晴斗は「明日ヒマなら会う?」と言ってくれたのだ。
音々(心の声)今日はちゃんと、デートっぽいこと…できるかな。
すると、晴斗がポケットに手を突っ込んで現れる。
しかし――隣には知らない女子が一人ついてきていた。
音々「あ……晴斗くん、あの子は……?」
晴斗「あぁ?ただの友達。音々も気にしなくていいよ。」
女子「ねぇ晴斗くん、あとでまたLINE返してよね〜」
音々の胸に小さなモヤが落ちる。
晴斗「じゃ、コンビニ行こうぜ。おごるからさ。」
音々「……うん。」
どこか“特別な扱い”ではない。
それでも音々は、好きな人と歩けるだけで幸せだった。
【シーン2:コンビニの前・ベンチ】
晴斗はアイスコーヒーを飲みながらスマホを見続けている。
音々は話すタイミングをつかめず、ずっと隣でそわそわしている。
音々「晴斗くんって、いつも女子に人気だよね……」
晴斗「そりゃまあ、モテるし?」
音々「……うん(自分で言うんだ…)」
晴斗は画面から視線を外さずに言う。
晴斗「音々もさ、俺といるからって勘違いすんなよ?“彼女として大事にします”みたいな感じじゃないから。」
音々の心に突き刺さる一言。
音々「そんな……重くしたいとかじゃなくて……わたしは、その……」
晴斗「まぁ音々は“扱いやすい”から楽。そういう意味では悪くないよ。」
音々「……扱いやすい……?」
頭の中が一瞬真っ白になる。
でも、好きが邪魔をして怒れない。
【シーン3:帰り道・夜の公園】
2人は並んで歩いている。沈黙が続く。
音々「ねぇ、今日……嬉しかったよ。会えて。」
晴斗「ふーん。」
音々「晴斗くんは……少しでも、わたしのこと……」
晴斗「好きかって?……さぁ。別に、言わなくてもよくね?」
音々の心が、ギュッとつかまれる。
晴斗「俺、気軽に付き合う主義って言ったろ?期待すんなよ。」
その直後、晴斗のスマホが鳴る。
画面には女子の名前がずらりと並ぶ。
晴斗「やっべ、返さねーと。先帰るわ。」
音々「あっ……うん……」
晴斗は手を振りもせずに去っていく。
音々(心の声)どうしてこんなに…苦しいんだろう。好きなのに、幸せじゃない。
【シーン4:夜・音々の部屋】
ベッドの上でスマホを見つめる音々。既読にならないメッセージ。
未来の音々の言葉が胸を刺す。
未来の音々『晴斗はやめなさい。後悔しかしない。』
音々「……わかってるよ……わかってるけど……好きなんだよ……どうしても……」
そのとき、スマホが震える。
蓮《今、少し出てこれる?話したいことある。》
音々の心が一瞬、揺れる。
音々「……蓮?」
カメラが音々の揺れた瞳を映し、暗転。
未来からあなたを守る 第4話 10人目の彼女
【シーン1:夜・公園のベンチ】
街灯がにじむ夜。音々は蓮と向かい合って座っている。
蓮「最近……大丈夫か?」
音々「え?何が……?」
蓮は少し迷ってから、言葉を吐き出す。
蓮「……晴斗のことだよ。」
音々の胸がズキンと痛む。
音々「わたしが誰を好きでも……蓮には関係ないでしょ。」
蓮「ああ、確かに関係ない。――関係ない、はずなんだけどさ。」
蓮の声が少し震えている。いつも明るい蓮からは想像できない顔。
蓮「……音々を傷つける男、見たくないんだよ。」
音々は息を飲む。
音々(心の声)どうして……そんな顔するの。
蓮「言いたくなかったけど言う。晴斗……“今、お前が10人目だ”。」
音々「………………え?」
蓮は俯きながら続ける。
蓮「名前も顔も、聞けば全部出てくる。アイツ、同時進行で何人もキープしてんだよ。本気で誰か一人を大事にするとか、そういうタイプじゃない。」
音々の鼓動が早くなる。
音々「……嘘だよ。そんな……っ」
蓮「嘘ならよかった。でも――本当だ。」
音々の視界が揺れる。
【シーン2:音々の部屋・深夜】
音々は震える手でスマホを握っている。
音々(心の声)10人……?わたしが、10人目……?そんなの、聞きたくなかった……。
そのとき、スマホが鳴った。晴斗からだ。
晴斗《明日ヒマ? ちょっと来てほしい》
音々の胸はまた跳ねてしまう。
音々「……わたし、ほんと馬鹿だ。」
涙がぽたぽたと落ちる。
音々(心の声)未来のわたしも、蓮も、みんな“やめろ”って言うのに……それでも心が追いかけちゃうの、どうしたらいいの。
【シーン3:翌日・放課後の校舎】
音々が昇降口で靴を履いていると、
背後から女子たちの会話が聞こえてくる。
女子A「ねぇ聞いた?晴斗くん、また彼女増えたって。」
女子B「え、今9人なんだけど?また?どんな管理してんの??」
女子C「てか、“音々”って子も今つながってるらしいよ?」
音々「っ……!」
女子たちに気づかれないように、その場を急ぎ足で去る。
音々(心の声)ほんとだった……ほんとに……10人目……。
【シーン4:道の角・蓮の登場】
音々が涙をこらえながら歩いていると、角から蓮が突然現れる。
蓮「音々!」
驚いた音々は立ち止まり、慌てて涙をぬぐう。
音々「……なんで蓮がここに……」
蓮「心配になって……待ってた。」
音々「心配なんか、いいよ……わたしなんか……10番目でも嬉しいとか思ってた……ばかだよね……ほんとに……」
蓮は一歩近づき、そっと音々の手を取る。
蓮「ばかじゃないよ。好きってさ、止められるもんじゃない。だから俺は……“音々が泣く恋”から、守りたかっただけなんだ。」
音々の涙があふれる。
蓮「俺なら……泣かせないのに。」
その瞬間、音々の胸が強く揺れた。
音々(心の声)わたし……蓮の言葉がこんなに刺さるなんて……。
音々のスマホが震える。晴斗からの通知。
《今どこ?早く来て》
音々は顔を上げる。
蓮の優しい目と、晴斗の冷たい通知画面。
音々の胸の中で、何かが音を立てて変わり始めていた。
未来からあなたを守る 第5話 手下扱い
【シーン1:カラオケ店・薄暗い個室】
音々が扉を開けると、晴斗はソファに足を組んで座り、周りには見知らぬ男子2人、女子1人がいた。
音々「え……晴斗くん以外にも……?」
晴斗「ああ。“みんなで来い”って言ったろ?」
音々「え……そんな……」
女子「この子が音々ちゃん?例の“新入り”?」
男子「晴斗の10人目だってさ〜、すげーよな!」
音々の顔から一気に血の気が引いていく。
晴斗「ほら、そこで座って。ドリンク取ってきて。アイス入れてな。」
音々「……わたしが?」
晴斗「お前しかいないだろ?」
男子「さすが“手下ちゃん”!って感じ〜」
げらげら笑う友人たち。晴斗は止めもしない。
音々は震える手で部屋を出た。
【シーン2:ドリンクバーの前】
音々はコップに氷を入れながら、必死に涙をこらえる。
音々(心の声)どうして……どうしてこんな扱いされてるのに、晴斗くんが好きって思ってるの……?
気づけば手が震え、氷がカランと落ちる。
音々「……嫌だよ……わたし、こんなの嫌……」
【シーン3:部屋に戻るとき・廊下】
そのとき背後から声がした。
???「……音々?」
振り向くと、汗をにじませた蓮がいた。
音々「れ、蓮?なんで……」
蓮「GPSとかじゃないぞ。“やばい気がする”って思ったら……足が勝手に動いた。」
音々の目から、ぽろり、と涙が落ちる。
音々「蓮……助けて……もう……耐えられない……」
蓮は一瞬だけ目を閉じ、音々の手首をぎゅっとつかんだ。
蓮「もう行くな。あいつのところに戻ったら……お前、壊れる。」
音々「でも……晴斗くんに呼ばれてて……」
蓮「呼ばれたら行くのか?“10人のうちの1人”が。」
音々の胸がぐさっと刺さる。
蓮「俺は……お前をそんな風に扱うやつ、絶対許さない。」
音々は泣きながら蓮の胸に倒れ込む。
蓮「大丈夫。もう泣かせないから。」
蓮は音々の頭をそっと抱きしめた。
【シーン4:晴斗の部屋に戻らないまま・夜の公園】
ベンチに並んで座る2人。音々は泣き疲れて肩を落としている。
音々「……蓮。もしわたしが……晴斗を本気でやめられなかったら……どうする?」
蓮は少し迷って、苦笑する。
蓮「それでも傍にいるよ。音々がどんな選択しても。……だって、好きだから。」
音々「――っ!?」
蓮「本当は……ずっと前から。」
音々の心臓が強く跳ねる。
音々(心の声)蓮が、わたしを……?
蓮「でも、答えを急がなくていい。今はただ……休め。」
音々は静かに頷き、蓮の肩に頭を預ける。
優しい沈黙。
でもその裏で、音々のスマホが震えている。
晴斗《遅い。何してんの?》
音々は画面を見つめ、苦しげに目を閉じた。
未来からあなたを守る 第6話 未来の涙
【シーン1:翌日・登校中の道】
夜の出来事が忘れられず、音々は重い足取りで学校へ向かっている。
音々(心の声)晴斗くんには会いたい。でも……蓮に優しくされると、あの言葉、思い出しちゃう。
《だって、好きだから。》
蓮の声が耳に蘇り、胸がぎゅっと締めつけられる。
【シーン2:学校・中庭】
音々がベンチに座ると、突然、あの“空気がねじれる音”が響く。
音々「……また?」
光の粒が集まり、未来の音々が姿を現す。
未来の音々「来ちゃった。言わなきゃいけないこと、まだあるから。」
音々「お願い。こないだみたいに“晴斗やめろ”って言わないで。もう……わたし、混乱してるの。」
未来の音々は悲しげに微笑む。
未来の音々「混乱なんて、生ぬるいよ。……このままあなたが晴斗を選んだ未来、“人生が壊れる”。」
音々「壊れる……?」
未来の音々はゆっくりと目線を落とす。
未来の音々「晴斗はね、“最後の最後まで、あんたを大事にしない”。10人どころじゃなくなる。数え切れないくらいの嘘、裏切り……。でもあんたは、好きだから、許しちゃうの。」
音々の喉が詰まる。
音々「そんなの……そんなの、想像したくない……!」
未来の音々が近づき、両肩に手を置く。
未来の音々「そしてね、ある日気づくの。“誰にも愛されてない人生だ”って。」
音々「…………っ!」
未来の音々の声が震え始める。
未来の音々「蓮はずっとあなたを好きで、苦しいほど想ってくれて、何度も助けようとしてくれた。……でも、あんたは気づかないまま、晴斗の影追って、最後まで蓮を選ばなかった。」
音々「そんなの……そんな未来……!」
未来の音々の目から、大粒の涙が落ちた。
未来の音々「――あたし、蓮に“さよなら”すら言えなかった。」
音々は胸が潰れそうになる。
音々「どうして……どうしてそんな悲しい未来になっちゃったの?」
未来の音々「“好きだから”よ。それだけ。ただ、それだけで……人生を間違えたの。」
音々は泣きながら首を横に振る。
音々「わたし……そんな未来、絶対に嫌だよ……」
未来の音々は音々の頬に触れ、優しくふき取る。
未来の音々「だから来たの。この未来だけは変えたい。蓮を選べとは言わない。でも……晴斗だけは、やめなさい。」
音々「……でも、好きなの……どうしても……」
未来の音々は一瞬目を閉じ、深く息を吐いた。
未来の音々「わかってる。恋って、そういうものだから。」
光が未来の音々を包み始める。
未来の音々「音々。あなたの未来は……あなたしか変えられない。どうか……どうか、あたしみたいにならないで。」
音々「待って!まだ聞きたいこと……!」
光が弾け、未来の音々は消えた。
音々は中庭に取り残され、両手で顔を覆い、膝の上に崩れ落ちた。
音々「……どうしたらいいの……誰を選べば……わたし……どうしたら……」
大きな涙が地面に落ちる。
未来からあなたを守る 第7話 蓮の想い
【シーン1:放課後・校庭】
音々は一人、ベンチに座っている。
未来の音々の言葉と、晴斗の冷たい態度が頭をぐるぐる回る。
音々(心の声)どうして……どうして好きになるのは、わたしを傷つける人ばかり……?
その時、背後から足音が近づく。
蓮「音々……座ってたのか。」
音々「蓮……」
蓮はベンチの隣に静かに腰を下ろす。
少し距離を置きながら、目を真っ直ぐに見つめる。
【シーン2:蓮の告白】
蓮「昨日、話したこと覚えてるか?」
音々「……うん。でも、わたし……」
蓮「言わせて。俺は……音々のこと、ずっと前から好きだった。」
音々の心臓がドキッと跳ねる。
蓮「好きっていうか……愛してる。ずっと、誰よりも大事にしたいって思ってた。」
音々「……そ、そんな……」
蓮「晴斗といるとき、お前の表情は輝いてる。でも、それ以上にお前が泣いたり、傷つく姿を見たくない。」
音々の胸がぎゅっと締めつけられる。
蓮「だから俺は、ただそばにいる。お前が誰を選んでも、俺は待つ。だけど、もしお前が気づくなら……お前の未来を守りたい。」
音々は言葉が出ず、ただ涙をこぼす。
音々(心の声)蓮……ずっと、わたしを……?こんなに優しいのに……わたし、どうして……
【シーン3:音々の揺れ】
その瞬間、音々のスマホが震える。晴斗からのメッセージ。
《今日ヒマ? 遊びに行こう》
音々は画面を見つめ、手が震える。
音々(心の声)晴斗くん……あの人のこと、好きって思うのは、やめられない……
蓮はそれを見て、静かにため息をつく。
蓮「……わかるよ。でも……音々。本当に幸せになれるのは、俺のそばかもしれない。」
音々はその言葉に心を打たれる。
しかし、晴斗の名前を見て、胸がざわつく。
音々「……わたし……どうしたら……」
蓮「答えは急がなくていい。ただ……俺はここにいるってことだけ、覚えてて。」
音々は蓮の手をぎゅっと握る。けれど心の中では、晴斗への気持ちがまだ消えない。
音々(心の声)どっちを選ぶべきなの……?どうして好きになるのは、傷つける人ばかり……
【シーン4:夜・音々の部屋】
ベッドに座り、涙をこらえながらスマホを握る音々。未来の音々の声が頭に蘇る。
未来の音々『晴斗はやめなさい。後悔しかしない。』
音々「わかってる……でも……どうしても……」
画面に晴斗から再び通知が来る。
《返信遅っ。もう怒ってる?》
音々は指を止め、深く息を吐く。そして、そっと蓮のメッセージを見る。
《大丈夫。急がなくていい。ずっと待ってるから。》
音々は涙を拭い、静かに目を閉じる。
音々(心の声)……蓮。わたし、ちゃんと向き合える日が来るかな……
夜の部屋に、静かな決意の気配が漂う。
未来からあなたを守る 第8話 崩壊のはじまり
【シーン1:放課後・カフェ】
音々は少し勇気を出して、晴斗に会いに行った。
しかし、店に入ると晴斗はすでに他の女子2人と座っていた。
音々「晴斗くん……」
晴斗「あ、来たんだ。ちょっと待ってて、今手が離せないから。」
女子たちはニヤニヤ笑いながら話す。音々は肩を落とす。
音々(心の声)やっぱり……わたし、ただの暇つぶし……
晴斗がやっと音々の方を向く。
晴斗「ごめんね、忙しくてさ。でも、俺といるなら我慢してよ、みんなといるときくらい。」
音々「……我慢?」
晴斗「だって、お前、まだ俺の“手下”だろ?付き合うって言っても、立場は同じだし。」
音々の心に激しい痛みが走る。
【シーン2:帰り道・雨】
音々は傘も持たず、駅へ向かって歩く。
雨が顔に当たり、涙と混ざって、さらに心を重くする。
音々(心の声)わたし……なんでこんなに好きなのに、こんなに傷つくの……
そのとき、背後から声がする。
蓮「音々!」
音々は振り返ると、蓮が傘を持って駆け寄ってきた。
蓮「雨に濡れてどうするんだ。傘、入る?」
音々は無言で頷き、傘の下に入る。
【シーン3:雨の中での告白】
蓮は真剣な表情で音々を見る。
蓮「音々……俺、言わなきゃいけない。晴斗といるとき、お前がどれだけ傷つくか……わかってるのに、見てるだけなんてできない。」
音々「でも……好きだから……」
蓮「それでも、俺はお前を守りたい。本当に幸せにできるのは……俺だけだ。」
音々は胸が苦しくなり、言葉が出ない。
蓮「音々。俺と、未来を作ろう。晴斗のせいで壊れる前に、俺のそばで笑ってほしい。」
音々は涙をこらえ、静かに蓮の手を握る。
音々(心の声)……でも、晴斗くんのことも……まだ、忘れられない……
【シーン4:夜・自室】
家に帰り、ベッドに倒れ込む音々。スマホに晴斗からの通知が光る。
《今日ヒマ? どこ行く?》
音々は画面を見つめ、指が止まる。
音々(心の声)未来のわたしの言葉、蓮の優しさ……でも、あの人の笑顔、まだ好き……
涙をこぼしながら、音々は小さくつぶやく。
音々「どうしたら……いいの……」
夜の闇に包まれ、音々の心は晴斗と蓮の間で引き裂かれたまま。
未来からあなたを守る 第9話 選ぶ未来
【シーン1:夜・音々の部屋】
音々はベッドに座り、未来の音々の言葉と蓮の告白、そして晴斗のメッセージを頭の中で何度も反芻していた。
音々(心の声)好き……でも、傷つけられるのは嫌。蓮……優しい。でも、晴斗も忘れられない。
彼女の胸は、まるで嵐のように乱れていた。
未来の音々『選ぶのは、あなた。でも、間違えたら、後悔しかない。』
音々は深く息を吐き、決意のように手を握る。
【シーン2:翌日・学校の屋上】
放課後、音々は屋上に向かう。
蓮と晴斗、両方に呼ばれていたが、まずは蓮と会うことに決めた。
蓮「音々……」
音々「うん。話したいことがあるの……」
音々は深呼吸し、目を蓮の目にしっかり向ける。
音々「わたし……蓮のこと、ずっと見てた。優しくて、わたしのこと本当に考えてくれる人…。
だから、ずっと傍にいてほしい。」
蓮の目が光る。
蓮「……本当に?音々。」
音々「うん……本当だよ。」
蓮は静かに音々を抱きしめる。
蓮「ありがとう……音々。これからは、絶対に泣かせない。」
音々は安心したように目を閉じる。
【シーン3:晴斗の最後の挑戦】
しかし、そこにスマホで連絡を取っていた晴斗が屋上に現れる。
晴斗「音々……俺と遊ぶの、まだ考えてくれない?」
音々は冷静にスマホをポケットにしまう。
音々「もう、考えない。わたしは……蓮くんと一緒にいる。」
晴斗の顔が一瞬、曇る。
晴斗「……ふーん。面白いこと言うな。じゃあ、勝手に楽しんでろよ。」
晴斗は屋上を去る。
音々は蓮の胸に顔を埋め、静かに涙を流す。
音々(心の声)やっと……決められた。わたし、本当に幸せになりたい。
【シーン4:夜・街灯の下】
音々と蓮は手をつないで歩く。
未来の音々の言葉も、もう頭に響かない。
蓮「音々、これからは全部俺に任せていい?」
音々「うん。任せるよ。」
夜風が2人を包む。音々の胸の中の嵐は、ようやく静かになった。
未来からあなたを守る 最終話 わたしの決断
【シーン1:朝・音々の部屋】
朝日が差し込み、音々は窓際で目を覚ます。隣には蓮が静かに座っていて、微笑んでいる。
蓮「おはよう、音々。」
音々「おはよう……蓮くん。」
音々の心はもう晴斗のことで揺れていない。
未来の不安も、涙も、すべて今日で一区切りつけたのだ。
【シーン2:学校・友達との会話】
放課後、音々は友達と笑いながら話している。
友達A「最近、音々落ち着いてるね。」
音々「うん、なんだか安心してる。」
友達B「誰かいるの?」
音々は微笑みながら、手を握る蓮の方を見る。
音々「うん、蓮くんがいる。」
【シーン3:夕暮れ・街を歩く2人】
音々と蓮は手をつなぎ、夕暮れの街を歩く。
蓮「未来のこと、不安じゃない?」
音々「ううん。蓮くんとなら、大丈夫。」
蓮「俺もだ。音々と一緒なら、どんな未来でも乗り越えられる。」
音々「うん、未来を一緒に歩こうね。」
2人は夕日を背に、静かに笑いあう。
過去の痛みも、晴斗の存在も、もう2人の間には影を落とさない。
【シーン4:夜・星空の下】
星空を見上げる音々と蓮。音々は小さく手を握りしめる。
音々「未来……やっと、安心して夢見られるね。」
蓮「そうだな。俺たちの未来は、これから作るんだ。」
音々「うん、二人で。」
夜空に輝く星の下、音々と蓮は静かに抱き合う。
物語は、ようやく温かく穏やかな結末を迎える。
【シーン1:放課後の屋上】
夕陽のオレンジが屋上を染めている。
音々は風に長い髪を揺らしながら、欄干にもたれかかっている。
音々(心の声)晴斗くん……今日も目が合わなかったな。こんなに好きなのに、届きもしない。
その瞬間——
ビュッ、と空気がねじれるような音がする。
音々「……え?」
光が消えたあと、そこにひとりの女の子が立っていた。
音々と同じ顔。
でも表情は少し大人で、影を含んだ目をしている。
未来の音々「久しぶり、って言ったほうがいいのかな。……いや、初めましてか。」
音々「えっ……なに?ドッキリ?双子?え、こわっ……!」
未来の音々は深くため息をつく。
未来の音々「いい?よく聞きなさい。あんたの旦那、蓮だよ。」
音々「…………は???」
【シーン2:衝撃と否定】
音々は思わず後ずさる。
音々「いやいやいや!ちょっと待って!蓮とは幼なじみだけど、そういうのじゃないし!わたしは晴斗くんが……!」
未来の音々「……そう、わかってる。今のあんたは晴斗が好き。だけど——その選択が未来をめちゃくちゃにする。」
音々「未来って……そんな大げさな……」
未来の音々「大げさじゃない。あんたが晴斗を選んだせいで、“私は”ひどい未来を生きた。」
音々「……!」
未来の音々「蓮はね、あんたが思ってるよりもずっと、ずっと大切にしてくれる人。晴斗とは違う。」
【シーン3:去り際の言葉】
未来の音々が薄く光をまとい始める。戻らなければならない時間が迫っている。
未来の音々「これだけは言っておく。晴斗はやめなさい。あの人を選んだら——後悔しかしない。」
音々「待って!どういうこと!?晴斗くんが何を——」
未来の音々「自分の目で確かめなさい。もうすぐ“本性”が見えるから。」
光が一瞬強くなり、未来の音々の姿はかき消える。
屋上にひとり残され、音々は呆然とつぶやく。
音々「……未来のわたしが言ったこと、信じられないよ。
だって……わたし、晴斗くんが好きなんだもん。」
カメラが遠ざかり、夕陽の中に音々が小さく立ち尽くしている。
未来からあなたを守る 第2話 止められない気持ち
【シーン1:翌朝・通学路】
音々はイヤホンを片耳だけつけて歩いている。
昨夜の出来事が頭の中で何度も反芻されていた。
音々(心の声)未来から来たわたしが、蓮が旦那って……何それ。変な夢みたい……。でも……晴斗くんのこと、好きなのは変わらない。
そのとき、背後から自転車のブレーキ音がする。
蓮「おーい、音々!危ないって!」
蓮が音々の横で自転車を止める。
心配そうな眼差し。
蓮「今日ぼーっとしてるな。なんかあった?」
音々「な、なんでもないよ!考え事してただけ!」
蓮「ふーん……。困ったら言えよ?」
蓮の言葉はやわらかくて、あたたかい。
だけど音々は首を振る。
音々(心の声)だめ……優しくされると揺れちゃう。わたしが好きなのは晴斗くんだけ。
【シーン2:昼休み・教室】
晴斗の周りには今日も女子が何人も集まっている。
笑い声、軽いノリ、キラキラした雰囲気。
音々は席から遠く彼を見つめてしまう。
音々(心の声)こんな人が、わたしを振り向いてくれるなんて、やっぱり奇跡なんだよね……。
晴斗がふとこちらを見た。
目が合う。
音々「あ……」
晴斗は微笑む——
……が、すぐに隣の女子に肩を寄せて話し出す。
音々(小さく)「……そっか。」
蓮が音々の机の横からひょっこり顔を出す。
蓮「おい、ため息深すぎ。肺が凹むぞ?」
音々「べ、別に!」
蓮「また晴斗か。」
図星すぎて言葉が詰まる音々。
蓮は小さく息を吐き、真剣な顔になる。
蓮「……音々。あいつ、やめとけよ。」
音々「どうしてそんなこと言うの?」
蓮「理由言ったら、たぶん泣く。」
音々「は?なにそれ……!」
イラッとしながらも、胸の奥がざわつく。未来の音々の言葉とリンクしてしまう。
【シーン3:放課後・校舎裏】
音々は勇気を振り絞り、ひとりで晴斗を呼び出した。
晴斗「で、話って何?」
音々「あの……わたし、晴斗くんのこと……」
緊張で声が震える。
晴斗はスマホをいじりながら言う。
晴斗「告白?」
音々「……っ!」
晴斗「そういうの、俺は基本、軽く付き合う主義だからさ。重いの無理。それでもいいなら……まあ、いいけど?」
彼は顔をほとんど上げない。
音々(心の声)それ……付き合うって言うの?わたしって……ただの、暇つぶし……?
でも、どうしても諦められない。
音々「……いい。それでも、わたし晴斗くんが好きだから。」
晴斗はやっと笑う。
晴斗「じゃ、今日からよろしく。連絡は気分で返すし、会うのも俺が暇なときだけな。」
音々「……うん。」
去っていく晴斗。その後ろ姿を、音々は胸を押さえながら見送る。
【シーン4:夜・ベッドの上】
スマホを握りしめながら、未来の音々の言葉が蘇る。
未来の音々『晴斗はやめなさい。後悔しかしない。』
音々(心の声)……でも。好きなんだよ……どうしようもない。
画面に晴斗からの通知が届く。
——“明日ヒマなら会う?”
音々は顔を明るくし、小さく笑った。
音々「晴斗くん……!」
その笑顔の裏で、未来は静かに軋み始めていた。
未来からあなたを守る 第3話 告白と違和感
【シーン1:放課後・校門前】
音々は胸を弾ませながら晴斗を待っている。
昨日、晴斗は「明日ヒマなら会う?」と言ってくれたのだ。
音々(心の声)今日はちゃんと、デートっぽいこと…できるかな。
すると、晴斗がポケットに手を突っ込んで現れる。
しかし――隣には知らない女子が一人ついてきていた。
音々「あ……晴斗くん、あの子は……?」
晴斗「あぁ?ただの友達。音々も気にしなくていいよ。」
女子「ねぇ晴斗くん、あとでまたLINE返してよね〜」
音々の胸に小さなモヤが落ちる。
晴斗「じゃ、コンビニ行こうぜ。おごるからさ。」
音々「……うん。」
どこか“特別な扱い”ではない。
それでも音々は、好きな人と歩けるだけで幸せだった。
【シーン2:コンビニの前・ベンチ】
晴斗はアイスコーヒーを飲みながらスマホを見続けている。
音々は話すタイミングをつかめず、ずっと隣でそわそわしている。
音々「晴斗くんって、いつも女子に人気だよね……」
晴斗「そりゃまあ、モテるし?」
音々「……うん(自分で言うんだ…)」
晴斗は画面から視線を外さずに言う。
晴斗「音々もさ、俺といるからって勘違いすんなよ?“彼女として大事にします”みたいな感じじゃないから。」
音々の心に突き刺さる一言。
音々「そんな……重くしたいとかじゃなくて……わたしは、その……」
晴斗「まぁ音々は“扱いやすい”から楽。そういう意味では悪くないよ。」
音々「……扱いやすい……?」
頭の中が一瞬真っ白になる。
でも、好きが邪魔をして怒れない。
【シーン3:帰り道・夜の公園】
2人は並んで歩いている。沈黙が続く。
音々「ねぇ、今日……嬉しかったよ。会えて。」
晴斗「ふーん。」
音々「晴斗くんは……少しでも、わたしのこと……」
晴斗「好きかって?……さぁ。別に、言わなくてもよくね?」
音々の心が、ギュッとつかまれる。
晴斗「俺、気軽に付き合う主義って言ったろ?期待すんなよ。」
その直後、晴斗のスマホが鳴る。
画面には女子の名前がずらりと並ぶ。
晴斗「やっべ、返さねーと。先帰るわ。」
音々「あっ……うん……」
晴斗は手を振りもせずに去っていく。
音々(心の声)どうしてこんなに…苦しいんだろう。好きなのに、幸せじゃない。
【シーン4:夜・音々の部屋】
ベッドの上でスマホを見つめる音々。既読にならないメッセージ。
未来の音々の言葉が胸を刺す。
未来の音々『晴斗はやめなさい。後悔しかしない。』
音々「……わかってるよ……わかってるけど……好きなんだよ……どうしても……」
そのとき、スマホが震える。
蓮《今、少し出てこれる?話したいことある。》
音々の心が一瞬、揺れる。
音々「……蓮?」
カメラが音々の揺れた瞳を映し、暗転。
未来からあなたを守る 第4話 10人目の彼女
【シーン1:夜・公園のベンチ】
街灯がにじむ夜。音々は蓮と向かい合って座っている。
蓮「最近……大丈夫か?」
音々「え?何が……?」
蓮は少し迷ってから、言葉を吐き出す。
蓮「……晴斗のことだよ。」
音々の胸がズキンと痛む。
音々「わたしが誰を好きでも……蓮には関係ないでしょ。」
蓮「ああ、確かに関係ない。――関係ない、はずなんだけどさ。」
蓮の声が少し震えている。いつも明るい蓮からは想像できない顔。
蓮「……音々を傷つける男、見たくないんだよ。」
音々は息を飲む。
音々(心の声)どうして……そんな顔するの。
蓮「言いたくなかったけど言う。晴斗……“今、お前が10人目だ”。」
音々「………………え?」
蓮は俯きながら続ける。
蓮「名前も顔も、聞けば全部出てくる。アイツ、同時進行で何人もキープしてんだよ。本気で誰か一人を大事にするとか、そういうタイプじゃない。」
音々の鼓動が早くなる。
音々「……嘘だよ。そんな……っ」
蓮「嘘ならよかった。でも――本当だ。」
音々の視界が揺れる。
【シーン2:音々の部屋・深夜】
音々は震える手でスマホを握っている。
音々(心の声)10人……?わたしが、10人目……?そんなの、聞きたくなかった……。
そのとき、スマホが鳴った。晴斗からだ。
晴斗《明日ヒマ? ちょっと来てほしい》
音々の胸はまた跳ねてしまう。
音々「……わたし、ほんと馬鹿だ。」
涙がぽたぽたと落ちる。
音々(心の声)未来のわたしも、蓮も、みんな“やめろ”って言うのに……それでも心が追いかけちゃうの、どうしたらいいの。
【シーン3:翌日・放課後の校舎】
音々が昇降口で靴を履いていると、
背後から女子たちの会話が聞こえてくる。
女子A「ねぇ聞いた?晴斗くん、また彼女増えたって。」
女子B「え、今9人なんだけど?また?どんな管理してんの??」
女子C「てか、“音々”って子も今つながってるらしいよ?」
音々「っ……!」
女子たちに気づかれないように、その場を急ぎ足で去る。
音々(心の声)ほんとだった……ほんとに……10人目……。
【シーン4:道の角・蓮の登場】
音々が涙をこらえながら歩いていると、角から蓮が突然現れる。
蓮「音々!」
驚いた音々は立ち止まり、慌てて涙をぬぐう。
音々「……なんで蓮がここに……」
蓮「心配になって……待ってた。」
音々「心配なんか、いいよ……わたしなんか……10番目でも嬉しいとか思ってた……ばかだよね……ほんとに……」
蓮は一歩近づき、そっと音々の手を取る。
蓮「ばかじゃないよ。好きってさ、止められるもんじゃない。だから俺は……“音々が泣く恋”から、守りたかっただけなんだ。」
音々の涙があふれる。
蓮「俺なら……泣かせないのに。」
その瞬間、音々の胸が強く揺れた。
音々(心の声)わたし……蓮の言葉がこんなに刺さるなんて……。
音々のスマホが震える。晴斗からの通知。
《今どこ?早く来て》
音々は顔を上げる。
蓮の優しい目と、晴斗の冷たい通知画面。
音々の胸の中で、何かが音を立てて変わり始めていた。
未来からあなたを守る 第5話 手下扱い
【シーン1:カラオケ店・薄暗い個室】
音々が扉を開けると、晴斗はソファに足を組んで座り、周りには見知らぬ男子2人、女子1人がいた。
音々「え……晴斗くん以外にも……?」
晴斗「ああ。“みんなで来い”って言ったろ?」
音々「え……そんな……」
女子「この子が音々ちゃん?例の“新入り”?」
男子「晴斗の10人目だってさ〜、すげーよな!」
音々の顔から一気に血の気が引いていく。
晴斗「ほら、そこで座って。ドリンク取ってきて。アイス入れてな。」
音々「……わたしが?」
晴斗「お前しかいないだろ?」
男子「さすが“手下ちゃん”!って感じ〜」
げらげら笑う友人たち。晴斗は止めもしない。
音々は震える手で部屋を出た。
【シーン2:ドリンクバーの前】
音々はコップに氷を入れながら、必死に涙をこらえる。
音々(心の声)どうして……どうしてこんな扱いされてるのに、晴斗くんが好きって思ってるの……?
気づけば手が震え、氷がカランと落ちる。
音々「……嫌だよ……わたし、こんなの嫌……」
【シーン3:部屋に戻るとき・廊下】
そのとき背後から声がした。
???「……音々?」
振り向くと、汗をにじませた蓮がいた。
音々「れ、蓮?なんで……」
蓮「GPSとかじゃないぞ。“やばい気がする”って思ったら……足が勝手に動いた。」
音々の目から、ぽろり、と涙が落ちる。
音々「蓮……助けて……もう……耐えられない……」
蓮は一瞬だけ目を閉じ、音々の手首をぎゅっとつかんだ。
蓮「もう行くな。あいつのところに戻ったら……お前、壊れる。」
音々「でも……晴斗くんに呼ばれてて……」
蓮「呼ばれたら行くのか?“10人のうちの1人”が。」
音々の胸がぐさっと刺さる。
蓮「俺は……お前をそんな風に扱うやつ、絶対許さない。」
音々は泣きながら蓮の胸に倒れ込む。
蓮「大丈夫。もう泣かせないから。」
蓮は音々の頭をそっと抱きしめた。
【シーン4:晴斗の部屋に戻らないまま・夜の公園】
ベンチに並んで座る2人。音々は泣き疲れて肩を落としている。
音々「……蓮。もしわたしが……晴斗を本気でやめられなかったら……どうする?」
蓮は少し迷って、苦笑する。
蓮「それでも傍にいるよ。音々がどんな選択しても。……だって、好きだから。」
音々「――っ!?」
蓮「本当は……ずっと前から。」
音々の心臓が強く跳ねる。
音々(心の声)蓮が、わたしを……?
蓮「でも、答えを急がなくていい。今はただ……休め。」
音々は静かに頷き、蓮の肩に頭を預ける。
優しい沈黙。
でもその裏で、音々のスマホが震えている。
晴斗《遅い。何してんの?》
音々は画面を見つめ、苦しげに目を閉じた。
未来からあなたを守る 第6話 未来の涙
【シーン1:翌日・登校中の道】
夜の出来事が忘れられず、音々は重い足取りで学校へ向かっている。
音々(心の声)晴斗くんには会いたい。でも……蓮に優しくされると、あの言葉、思い出しちゃう。
《だって、好きだから。》
蓮の声が耳に蘇り、胸がぎゅっと締めつけられる。
【シーン2:学校・中庭】
音々がベンチに座ると、突然、あの“空気がねじれる音”が響く。
音々「……また?」
光の粒が集まり、未来の音々が姿を現す。
未来の音々「来ちゃった。言わなきゃいけないこと、まだあるから。」
音々「お願い。こないだみたいに“晴斗やめろ”って言わないで。もう……わたし、混乱してるの。」
未来の音々は悲しげに微笑む。
未来の音々「混乱なんて、生ぬるいよ。……このままあなたが晴斗を選んだ未来、“人生が壊れる”。」
音々「壊れる……?」
未来の音々はゆっくりと目線を落とす。
未来の音々「晴斗はね、“最後の最後まで、あんたを大事にしない”。10人どころじゃなくなる。数え切れないくらいの嘘、裏切り……。でもあんたは、好きだから、許しちゃうの。」
音々の喉が詰まる。
音々「そんなの……そんなの、想像したくない……!」
未来の音々が近づき、両肩に手を置く。
未来の音々「そしてね、ある日気づくの。“誰にも愛されてない人生だ”って。」
音々「…………っ!」
未来の音々の声が震え始める。
未来の音々「蓮はずっとあなたを好きで、苦しいほど想ってくれて、何度も助けようとしてくれた。……でも、あんたは気づかないまま、晴斗の影追って、最後まで蓮を選ばなかった。」
音々「そんなの……そんな未来……!」
未来の音々の目から、大粒の涙が落ちた。
未来の音々「――あたし、蓮に“さよなら”すら言えなかった。」
音々は胸が潰れそうになる。
音々「どうして……どうしてそんな悲しい未来になっちゃったの?」
未来の音々「“好きだから”よ。それだけ。ただ、それだけで……人生を間違えたの。」
音々は泣きながら首を横に振る。
音々「わたし……そんな未来、絶対に嫌だよ……」
未来の音々は音々の頬に触れ、優しくふき取る。
未来の音々「だから来たの。この未来だけは変えたい。蓮を選べとは言わない。でも……晴斗だけは、やめなさい。」
音々「……でも、好きなの……どうしても……」
未来の音々は一瞬目を閉じ、深く息を吐いた。
未来の音々「わかってる。恋って、そういうものだから。」
光が未来の音々を包み始める。
未来の音々「音々。あなたの未来は……あなたしか変えられない。どうか……どうか、あたしみたいにならないで。」
音々「待って!まだ聞きたいこと……!」
光が弾け、未来の音々は消えた。
音々は中庭に取り残され、両手で顔を覆い、膝の上に崩れ落ちた。
音々「……どうしたらいいの……誰を選べば……わたし……どうしたら……」
大きな涙が地面に落ちる。
未来からあなたを守る 第7話 蓮の想い
【シーン1:放課後・校庭】
音々は一人、ベンチに座っている。
未来の音々の言葉と、晴斗の冷たい態度が頭をぐるぐる回る。
音々(心の声)どうして……どうして好きになるのは、わたしを傷つける人ばかり……?
その時、背後から足音が近づく。
蓮「音々……座ってたのか。」
音々「蓮……」
蓮はベンチの隣に静かに腰を下ろす。
少し距離を置きながら、目を真っ直ぐに見つめる。
【シーン2:蓮の告白】
蓮「昨日、話したこと覚えてるか?」
音々「……うん。でも、わたし……」
蓮「言わせて。俺は……音々のこと、ずっと前から好きだった。」
音々の心臓がドキッと跳ねる。
蓮「好きっていうか……愛してる。ずっと、誰よりも大事にしたいって思ってた。」
音々「……そ、そんな……」
蓮「晴斗といるとき、お前の表情は輝いてる。でも、それ以上にお前が泣いたり、傷つく姿を見たくない。」
音々の胸がぎゅっと締めつけられる。
蓮「だから俺は、ただそばにいる。お前が誰を選んでも、俺は待つ。だけど、もしお前が気づくなら……お前の未来を守りたい。」
音々は言葉が出ず、ただ涙をこぼす。
音々(心の声)蓮……ずっと、わたしを……?こんなに優しいのに……わたし、どうして……
【シーン3:音々の揺れ】
その瞬間、音々のスマホが震える。晴斗からのメッセージ。
《今日ヒマ? 遊びに行こう》
音々は画面を見つめ、手が震える。
音々(心の声)晴斗くん……あの人のこと、好きって思うのは、やめられない……
蓮はそれを見て、静かにため息をつく。
蓮「……わかるよ。でも……音々。本当に幸せになれるのは、俺のそばかもしれない。」
音々はその言葉に心を打たれる。
しかし、晴斗の名前を見て、胸がざわつく。
音々「……わたし……どうしたら……」
蓮「答えは急がなくていい。ただ……俺はここにいるってことだけ、覚えてて。」
音々は蓮の手をぎゅっと握る。けれど心の中では、晴斗への気持ちがまだ消えない。
音々(心の声)どっちを選ぶべきなの……?どうして好きになるのは、傷つける人ばかり……
【シーン4:夜・音々の部屋】
ベッドに座り、涙をこらえながらスマホを握る音々。未来の音々の声が頭に蘇る。
未来の音々『晴斗はやめなさい。後悔しかしない。』
音々「わかってる……でも……どうしても……」
画面に晴斗から再び通知が来る。
《返信遅っ。もう怒ってる?》
音々は指を止め、深く息を吐く。そして、そっと蓮のメッセージを見る。
《大丈夫。急がなくていい。ずっと待ってるから。》
音々は涙を拭い、静かに目を閉じる。
音々(心の声)……蓮。わたし、ちゃんと向き合える日が来るかな……
夜の部屋に、静かな決意の気配が漂う。
未来からあなたを守る 第8話 崩壊のはじまり
【シーン1:放課後・カフェ】
音々は少し勇気を出して、晴斗に会いに行った。
しかし、店に入ると晴斗はすでに他の女子2人と座っていた。
音々「晴斗くん……」
晴斗「あ、来たんだ。ちょっと待ってて、今手が離せないから。」
女子たちはニヤニヤ笑いながら話す。音々は肩を落とす。
音々(心の声)やっぱり……わたし、ただの暇つぶし……
晴斗がやっと音々の方を向く。
晴斗「ごめんね、忙しくてさ。でも、俺といるなら我慢してよ、みんなといるときくらい。」
音々「……我慢?」
晴斗「だって、お前、まだ俺の“手下”だろ?付き合うって言っても、立場は同じだし。」
音々の心に激しい痛みが走る。
【シーン2:帰り道・雨】
音々は傘も持たず、駅へ向かって歩く。
雨が顔に当たり、涙と混ざって、さらに心を重くする。
音々(心の声)わたし……なんでこんなに好きなのに、こんなに傷つくの……
そのとき、背後から声がする。
蓮「音々!」
音々は振り返ると、蓮が傘を持って駆け寄ってきた。
蓮「雨に濡れてどうするんだ。傘、入る?」
音々は無言で頷き、傘の下に入る。
【シーン3:雨の中での告白】
蓮は真剣な表情で音々を見る。
蓮「音々……俺、言わなきゃいけない。晴斗といるとき、お前がどれだけ傷つくか……わかってるのに、見てるだけなんてできない。」
音々「でも……好きだから……」
蓮「それでも、俺はお前を守りたい。本当に幸せにできるのは……俺だけだ。」
音々は胸が苦しくなり、言葉が出ない。
蓮「音々。俺と、未来を作ろう。晴斗のせいで壊れる前に、俺のそばで笑ってほしい。」
音々は涙をこらえ、静かに蓮の手を握る。
音々(心の声)……でも、晴斗くんのことも……まだ、忘れられない……
【シーン4:夜・自室】
家に帰り、ベッドに倒れ込む音々。スマホに晴斗からの通知が光る。
《今日ヒマ? どこ行く?》
音々は画面を見つめ、指が止まる。
音々(心の声)未来のわたしの言葉、蓮の優しさ……でも、あの人の笑顔、まだ好き……
涙をこぼしながら、音々は小さくつぶやく。
音々「どうしたら……いいの……」
夜の闇に包まれ、音々の心は晴斗と蓮の間で引き裂かれたまま。
未来からあなたを守る 第9話 選ぶ未来
【シーン1:夜・音々の部屋】
音々はベッドに座り、未来の音々の言葉と蓮の告白、そして晴斗のメッセージを頭の中で何度も反芻していた。
音々(心の声)好き……でも、傷つけられるのは嫌。蓮……優しい。でも、晴斗も忘れられない。
彼女の胸は、まるで嵐のように乱れていた。
未来の音々『選ぶのは、あなた。でも、間違えたら、後悔しかない。』
音々は深く息を吐き、決意のように手を握る。
【シーン2:翌日・学校の屋上】
放課後、音々は屋上に向かう。
蓮と晴斗、両方に呼ばれていたが、まずは蓮と会うことに決めた。
蓮「音々……」
音々「うん。話したいことがあるの……」
音々は深呼吸し、目を蓮の目にしっかり向ける。
音々「わたし……蓮のこと、ずっと見てた。優しくて、わたしのこと本当に考えてくれる人…。
だから、ずっと傍にいてほしい。」
蓮の目が光る。
蓮「……本当に?音々。」
音々「うん……本当だよ。」
蓮は静かに音々を抱きしめる。
蓮「ありがとう……音々。これからは、絶対に泣かせない。」
音々は安心したように目を閉じる。
【シーン3:晴斗の最後の挑戦】
しかし、そこにスマホで連絡を取っていた晴斗が屋上に現れる。
晴斗「音々……俺と遊ぶの、まだ考えてくれない?」
音々は冷静にスマホをポケットにしまう。
音々「もう、考えない。わたしは……蓮くんと一緒にいる。」
晴斗の顔が一瞬、曇る。
晴斗「……ふーん。面白いこと言うな。じゃあ、勝手に楽しんでろよ。」
晴斗は屋上を去る。
音々は蓮の胸に顔を埋め、静かに涙を流す。
音々(心の声)やっと……決められた。わたし、本当に幸せになりたい。
【シーン4:夜・街灯の下】
音々と蓮は手をつないで歩く。
未来の音々の言葉も、もう頭に響かない。
蓮「音々、これからは全部俺に任せていい?」
音々「うん。任せるよ。」
夜風が2人を包む。音々の胸の中の嵐は、ようやく静かになった。
未来からあなたを守る 最終話 わたしの決断
【シーン1:朝・音々の部屋】
朝日が差し込み、音々は窓際で目を覚ます。隣には蓮が静かに座っていて、微笑んでいる。
蓮「おはよう、音々。」
音々「おはよう……蓮くん。」
音々の心はもう晴斗のことで揺れていない。
未来の不安も、涙も、すべて今日で一区切りつけたのだ。
【シーン2:学校・友達との会話】
放課後、音々は友達と笑いながら話している。
友達A「最近、音々落ち着いてるね。」
音々「うん、なんだか安心してる。」
友達B「誰かいるの?」
音々は微笑みながら、手を握る蓮の方を見る。
音々「うん、蓮くんがいる。」
【シーン3:夕暮れ・街を歩く2人】
音々と蓮は手をつなぎ、夕暮れの街を歩く。
蓮「未来のこと、不安じゃない?」
音々「ううん。蓮くんとなら、大丈夫。」
蓮「俺もだ。音々と一緒なら、どんな未来でも乗り越えられる。」
音々「うん、未来を一緒に歩こうね。」
2人は夕日を背に、静かに笑いあう。
過去の痛みも、晴斗の存在も、もう2人の間には影を落とさない。
【シーン4:夜・星空の下】
星空を見上げる音々と蓮。音々は小さく手を握りしめる。
音々「未来……やっと、安心して夢見られるね。」
蓮「そうだな。俺たちの未来は、これから作るんだ。」
音々「うん、二人で。」
夜空に輝く星の下、音々と蓮は静かに抱き合う。
物語は、ようやく温かく穏やかな結末を迎える。