星降る夜に、あの日のキスをもう一度
「――何か願い事はしましたか?」
数秒後に唇を離して彼女の目をのぞき込むと、「あなたは?」と聞き返される。彼女の目の奥に小さな炎が見えた気がした。いつもはおとなしい灰色の目が、今は綺麗な紫になっている。
共に流れ星を見た恋人や夫婦が口づけを交わすと、願いが叶うと言われている。今二人は仮初めの夫婦だ。
「私は、もう一度あなたにキスしたい」
思わず本音が出て焦ったが、アンジェラ、否、月の女神は太陽神の首に手を回し、優しい口づけをくれた。
「アンジェラ……」
感極まって名前を呼ぶと、彼女の目が一瞬丸くなった後優しく細められる。だがコンラッドが仮面をとって名乗ろうとし手を上げた瞬間、口元に彼女の指を当てられ首を振られた。
「今は夢の時間ですよ、背の君。もし今の気持ちが本物でしたら、次お会いしたときに聞きますわ」
そして身をひるがえすと、彼女は一度も振り向くことなく去って行った。
激しく胸を叩く心臓が歓喜の音を立てる。
「明日好きだと告げよう」
そう決めた。
しかしアンジェラは急用ができたとかで、朝を待たずに帰ってしまっていた。
「ヴィクトリア、幻視の魔法をかけてくれないか。髪を金色のままにしたいんだ」
学園でこの力が使えるのは彼女だけだ。
「よっぽど気に行ったの?」と、おかしそうに快諾してくれたヴィクトリアは、コンラッドの髪の色が金色に見えるようにしてくれる。これで魔法を解くまで、髪が伸びようとも黒にはならない。
この髪の色で、アンジェラに結婚を申し込もうと思った。
カレイドより一日遅いリリスの卒業式典に向かったコンラッドは、彼女が一足先に卒業していたことをそこで初めて知る。
対応に出た事務職員が、資料を見て申し訳なさそうに眉をさげた。
「彼女の嫁ぎ先が外国で、出発が早まったらしいわ」