今日はここまで、ここから一緒に〜君と作る未来〜



「本日は、話題の〝家族の時間を守るキッチン〟を開発した〝キッチン王子〟こと久遠快浬さんに、特別に料理教室をしていただきます」



アナウンサーがカメラに向かって笑顔を見せる。

イベントが始まると、参加者たちは、
いつもより少し緊張した面持ちでエプロンを締めていた。



「緊張しているのは、参加者だけではありませんね」



カメラマンが、小声で笑う。



「キッチン王子、カメラ向けられるとちょっと固くなる」



確かに、
快浬さんの表情はいつもより少し硬かった。

だが、調理が進むにつれて、
そのぎこちなさは徐々に消えていく。



「包丁が苦手な方は、無理をせず、遠慮なく助けを求めてください」



「〝完璧にやらなきゃ〟と思うと、料理はつらくなります。〝一人じゃない〟と思えば、料理も楽しくなります」



 
その言葉に、アナウンサーが感心したように頷く。




「〝一人じゃない〟って、思えるキッチン……なんだか、今の時代にぴったりな気がしますね」



カメラは、そんな会話を逃さず追っていた。

そして――




「お二人、本当に息ぴったりですね」



取材クルーが、わたしと快浬さんにマイクを向ける。



「見ていて、〝仕事のパートナー〟というより、〝夫婦みたい〟という声も出てるんですけど」



参加者の一人が、照れ笑いしながらそう言った。



「いえ、私たちはあくまで、開発チームの――」



快浬さんがいつものように否定しかけたそのとき。

わたしは、不思議と落ち着いていた。



「いえ、隠すのはもう辞めておきましょう。〝これからの未来〟を一緒に考えられるパートナーです」



そう返すと、会場がどっと歓声に包まれる。
< 160 / 200 >

この作品をシェア

pagetop