今日はここまで、ここから一緒に〜君と作る未来〜
自動ドアが音もなく開く。
ロビーに一歩踏み入れると、
冷たく整えられた空気と、
ほんのりと塗装と木材の匂いが混じったような、
独特の香りがした。
天井の高いエントランスの片側には、
暁キッチンの歴代モデルがミニチュアで展示され、
雑誌には『キッチンといえば暁』と謳《うた》う広告があふれていた。
日本有数の王手システムキッチンメーカー『暁キッチン』は、
かつて業界シェア一位を誇っていたが、
その栄光は過去のものになりつつある。
競合他社がサブスクリプション型メンテナンスやスマート家電連携を次々と打ち出す中、
暁キッチンはかたくなに『職人の手仕事』と『昔ながらのブランドイメージ』にしがみつき、
売上は三年連続で右肩下がり。
社内には見えない疲労の膜が張りつめていた。