愛するあなたを殺させないため、死に戻った私はこの恋を捨てると決めた
 にこやかにそう言って、ザカリアスはエリシアのあとをついてくる。部屋に入られるのが嫌で、エリシアは思わず執事の顔を見上げた。
「今から着替えるつもりなの。出て行ってもらえるかしら」
「これは失礼いたしました。お嬢様のアクセサリーの手入れが終わりましたので、お持ちしたところだったのです」
 よく見ると、ザカリアスが手にしたトレーの上にはいくつかのアクセサリーが並んでいた。それは間違いなく、エリシアのものだ。以前から彼がエリシアや母親のアクセサリーの手入れをしてくれていたことは知っている。だけど、今になってそれがとてつもなく気持ち悪く感じてしまう。
「あとでダナに片付けてもらうから、そこに置いておいて。……着替えを、するから」
 念を押すようにそう言うと、ザカリアスはすぐに部屋を出て行った。しっかりと閉めたドアに背中を預けて、エリシアは目を閉じる。
 自分が身につけるものを、ザカリアスが触っていると思うだけで不快だ。気に入っていたアクセサリーだけど、もう使えそうにないとエリシアはため息をついた。
 
 外出から帰ると、いつも出迎えてくれるはずのザカリアスの姿がなかった。何か用事でもこなしているのだろうと、顔を合わせずに済んだとホッとしながら自室に戻ろうとしたところ、部屋の中に人の気配がした。
 ダナはお茶の準備をしてくると言って厨房へ行ったはずだから、ここにいるわけがない。
 震える手でドアを開けたエリシアの目に飛び込んできたのは、部屋の中で何かを握りしめて佇むザカリアスの姿だった。
「……っ、何をしているの」
 あがりかけた悲鳴を堪えて声をかけると、彼はにこりと微笑んでエリシアを見た。その顔には悪気など全くない。
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