愛するあなたを殺させないため、死に戻った私はこの恋を捨てると決めた
 エリシアの顔をのぞき込んで、ヴィクトルは心配そうに眉尻を下げる。最近は、家にいる時はヴィクトルがなるべく一緒にいてくれる。今も二人で、意味もなくお茶を飲んでいた。彼には学業だってあるのに、エリシアの不安を解消するためそばにいてくれるのだ。弟の気遣いをありがたく思いながらも、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
 そこに、ザカリアスが顔をのぞかせた。彼の姿を見た瞬間に、ヴィクトルは背筋を伸ばして警戒した様子になる。エリシアは痛いほどに早鐘を打つ鼓動を感じて、思わず胸に手を当てた。
「ヴィクトル様、こちらにいらしたのですね。旦那様がお呼びですよ。先日の試験の結果について聞きたいと」
「……分かった」
 渋々といった様子で、ヴィクトルがうなずく。ザカリアスはヴィクトルを案内するため一緒に部屋を出るのかと思いきや、笑みを浮かべてエリシアに近づいてきた。
「お嬢様は、まだこちらでお茶を楽しまれますか?」
「い……いいえ、私も部屋に戻るわ」
「でしたら、お送り――」
 ザカリアスが言いかけた瞬間、ヴィクトルがエリシアの腕を引いた。
「姉さんも行こう。途中までは一緒だろう」
「そうね」
 弟の助け舟に内心で感謝しながら、エリシアは彼に続いて部屋を出る。
 二人を見送る執事は、黙って微笑んでいる。だけど、ヴィクトルに向ける視線に微かな苛立ちがまじっているように思えて、エリシアは背筋がぞっとするのを感じていた。

 ◇

 数日後、夕食の席でザカリアスがヴィクトルのグラスに水を注ぎながら「そういえば」と何かを思い出したような声をあげる。
「ヴィクトル様は本日も食後に、エリシアお嬢様とお茶をされますか?」
「……そのつもりだけど」
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