おいしそうに食べる君が、苦手です〜ずるい年下後輩の甘い執着〜
ずるい後輩

おいしそうに食べる人が、苦手だ。正確に言うと、苦手なふりをしていた。

喉仏が静かに動く瞬間とか、眉がわずかに下がる瞬間とか、そういうものから目が離せない自分を、ずっと持て余していた。

このことを誰かに話したことはない。食べ方の好みなんて、説明しようとすると必ずどこかがずれる。だからずっと、黙っていた。


私が勤めているのは、都内の食品メーカーだ。

水野(みずの)麻衣(まい)、二十九歳。商品企画で七年、仕事は好きだ。しっかりしてるね、と言われることが多く、褒め言葉として受け取っている。

ただ、そのわりに恋愛だけは、どうも要領が悪い。三年前に別れた彼のことを、まだ引きずっている。



四月に入って最初の週、桜がまだ散りきらないうちに、橋本(はしもと)(あおい)が私たちの部署にやってきた。

二十六歳、第二新卒での入社。前職は飲食のホールだと聞いた。

穏やかな顔をしていて、誰に対しても感じがいい。最初は、可もなく不可もなく、という印象だった。

問題は、ランチの時に起きた。
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