愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 これでは万が一この屋敷内で盗難でもあったら確実に始めに疑われるのは私になってしまう。

「いえ、その、目印に……と思いまして」

 慌てて付け足すとその顔は柔らかいものへと変わる。

「ああ、そうか。わからなくなったらいつでも遠慮しないで聞けばいい。この屋敷のものは皆優しいものばかりだから」
「そうさせていただきます……」

 これ以上疑われるような真似をして追い出されたり、すぐにでも借金全額返金するように言われたりしたら困る。

 何かを狙っていないことを表すためにも、キョロキョロとせずにまっすぐに前だけを見て歩くことにした。

 すると安心したのか、ラウス様はそれからダイニングルームにつくまで一度も振り返ることはなかった。

 部屋へと入り、立ち止まる私の手をラウス様が手放すことはなかった。それどころか「席に案内する」と微笑みかけてくれるのだ。

 カリバーン家は使用人と一緒にご飯を食べるのか。

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