恋をしない秘書と恋に落ちた御曹司の甘くて危険な攻防戦
 パーティーは夜からだというのに、私は朝からそわそわと落ち着かなかった。朝食を口に運んでも、何を食べているのかよく分からないほど緊張していて、料理の味もほとんど感じることができない。

 それなのに、時間だけは容赦なく、着実に過ぎていく——

「準備に行こうか」

「はい……」

 所長に声をかけられ、ホテルの前でタクシーに乗り込む。車窓から流れる景色をぼんやり眺めているうちに、昨日訪れたあの店へと到着した。

『いらっしゃいませ』

『よろしくお願いします』

『畏まりました』

 スタッフは皆、自信に満ちあふれた笑顔で私たちを迎えてくれる。その落ち着いた対応を見ていると、こちらまで少しだけ安心できる気がした。

 そこから先は、私はもう完全になすがままだった。

 丁寧なお肌の手入れから始まり、次々とヘアメイクが施されていく。プロの手が加わるたびに、鏡の中の平凡だった私の姿は少しずつ変わり、まるで別人のように華やかで煌びやかな女性へと生まれ変わっていく。

 何度も鏡を見返してしまうほど、その変化は自分でも信じられなかった。

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