敏腕CEOと契約結婚したら、攻略不能なほど溺愛されています
 話しているうちに、気づいたら独占欲を隠しきれなくなっていた。必死になっている自覚はあったが、こうなると自分でも止められない。

「もちろんわかってますよ。俺は職場でずっと一緒なんで」

 これまで一番近くにいたのは自分だったのだと、マウントを取りたいのだろうか。〝ずっと一緒〟という言葉だけ強調したように聞こえた。

「だけど、陽咲は俺の妻だ。誰にも渡さない」

 俺はキュッと口を横に引き結び、鋭い視線を送って牽制する。絶対に手は出させないと目で訴えるように。

「あなたはもっと余裕のある人なのかと思っていました。俺みたいな一介の書店員に嫉妬を剥き出しにするなんて、大富豪も人間らしい部分があるんですね」
「あたり前だ」

 必死になるに決まっているだろう。俺は本気で陽咲を想っていて、生涯大切にするつもりだ。
 彼女は利害一致の結婚をした気でいるかもしれないが、俺は陽咲に惚れているんだから、誰にもこの生活を邪魔されたくない。

「ま、今のでちょっとだけ見直しました。まだ信用してませんけどね」

「なんだそれ」と言い返そうとしたら、彼はくるりと背を向けて自分勝手に去っていった。

(アイツになにがわかるんだ)

 はぁっと小さくため息が出た。御曹司にはそれなりのプレッシャーもあるし、ねたまれるのは日常茶飯事。表面的な女性たちに失望して、恋愛不信にもなる。

「……俺だって、こんなに余裕がなくなるとは思ってなかったよ」

 ポツリとこぼれたひとりごとが、夜の空気に溶けて消えた。
 彼女のそばにいたい、自分だけのものにしたいという独占欲に、いつの間にか支配されていると気づいた瞬間だった。
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