氷の部長の大臀筋(お尻)を拝んでいただけなのに、バレて囲い込まれました

5.お尻を堪能していただけなのに

 いつも通り完璧にアイロンの掛けられた白いワイシャツに、仕立ての良いグレーのスーツを纏った常盤が立っている。
 相変わらずの、人を寄せ付けない圧倒的なオーラ。
 周囲の先輩たちが一瞬でサッと目を逸らし、自分のデスクへと散っていく。

「この辞令、一体どういう……」
「言ったはずだ。逃げられると思うな、と」
 常盤は周囲には聞こえないほどの低い声で囁くと、書類を挟んだバインダーを和葉のデスクにトンと置いた。

「これからはおまえが俺のスケジュールを管理しろ。つまり、社内でも社外でも、おまえは常に俺の後ろに付いて回ることになる」
「後ろ……」
 そのワードに、和葉の脳裏に昨日の完璧な放物線が鮮烈に蘇る。

「いくらでも特等席から眺めるといい。不純なエネルギーをせいぜい会社の利益に還元してくれ」
 恥ずかしすぎる!
 でも合法!?
 いや、変態は変態か。

「ただし、俺もおまえを容赦なく観察させてもらう。赤くなっているその耳も、白いうなじに映える後れ毛も、とうの昔から俺のツボだからな」
「え……?」
「ずっと前から俺だけのものにしたかった」
 驚いて顔を上げた和葉の視界に、常盤の綺麗な唇が弧を描くのが映る。

「これからは公私ともに、おまえを俺の特等席に拘束する」
 呆然とする和葉を置き去りにしたまま、常盤はいつも通りの隙のない足取りで部長席へ。
 今日もスラックスの生地が動きに合わせてピンと張り、極上のヒップラインを描き出しているのに、集中できない。

 はい?
 白いうなじ? 後れ毛?
 って、くせ毛で言うことを聞かないこの髪の毛……!?
 和葉は真っ赤な顔であわてて首筋を隠した。

「水野、早くしろ」
「ひゃいっ」
 怒涛の急展開に、和葉の心臓は完全にキャパオーバーだ。

 昔からっていつから?
 俺のツボ? 嘘でしょ。
 公私ともにってどういうこと?

「まずは来週の出張手配を」
「しゅ、出張!?」
 手渡された行き先は日帰りでは厳しい距離。
 しかも、なぜかホテルの部屋は1部屋だけ?
 これって、まさか……いきなりお泊まりコース!

「もう逃がさない。やっとおまえを囲い込める」
 耳元に降ってきた低い声と、不敵に微笑む『氷の部長』。
 
 芸術的なお尻を堪能していただけなのに……!
 常盤が仕掛けた底なしの溺愛トラップに、どうやらまんまと囚われてしまったようだ。
 逃げることができないフェチの執着に。

  END
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