空に吹く、風の音を教えて。
電車の中で弟の颯太はずっと光莉ちゃんを独占していた。

ここまでアピールがすごいと逆に引かれるんじゃないかと心配になるけど、光莉ちゃんもなかなかの圧だからお互い様って感じでなんだかんだいい組み合わせな気もしていた。

颯太は昔から自己肯定感が恐ろしく高い。

姉の私の色眼鏡抜きとしても生まれ持ってルックスが最高に良く、頭も良くて運動全般大得意。

なもんだから、オレは何でも出来るっていう確固たる価値観が出来上がっていて、口癖は「オレは天才だから不可能なんてない」なのである。

つまり、颯太には光莉ちゃんを堕とせるという確固たる自信があり、それに基づくストーリーを絶賛実践中というわけなのだ。

その様はある意味では健気なので姉として温かく見守っている、というわけ。

そんな弟とは対照的に私はパッとしないし、昔からいろんなものがぼんやりして見えてる。

こうしたい。

あれやりたい。

これが好き。

それは嫌い。

みたいなのがないんだよね。

だから今もただなんとなく流されるままに行動しちゃってる。

時間になったら走り出す電車のように、動かされてるだけ。


本当は私…どうしたかったんだろう?

あの日のこと、掘り返すつもりあったのかな?

今まで音沙汰なかった人になんて言おう?


そんな靄がかかった気持ちを抱いたまま電車に揺られていたのだった。
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