春は眩しくて、届かない
「……柏木くん」
「ん?」
紙袋を差し出す。
その瞬間、 急に頭が真っ白になる。
好きとか、 頑張って作ったとか、 本当はいっぱい言いたかった。
でも結局、 口から出たのは。
「……いつも、ありがとう」
静かな声だった。
柏木くんが少し目を見開く。
数秒遅れて、 紙袋を受け取った。
「……俺に?」
「う、うん」
「……まじで?」
その言い方が少しおかしくて、 りのんは思わず笑ってしまう。
柏木くんは紙袋を見下ろして、 それから少しだけ照れたみたいに後頭部を掻いた。
「……嬉しい」
ぽつりと落ちた声。
その一言だけで、 胸の奥が熱くなる。
教室の窓の外、 冬の夕焼けが静かに滲んでいた。