春は眩しくて、届かない
「なんか早いね」
「ねー」
陽奈はそう返したあと、 ちらっとりのんを見る。
「……で?」
「なに」
「りのんの春はいつくるんですか?」
「うるさい」
「柏木くんそろそろ頑張ってくれないかな〜」
りのんは思わず笑ってしまう。
でも、 胸の奥は少しだけ落ち着かなかった。
春になった。
つまり、 “ずっとこのまま”じゃいられないってことだ。
クラス替えだってある。
進路もある。
今みたいに、 当たり前に隣を歩ける保証なんてない。
春の光が後ろから差し込んで、 少しだけ眩しい。
窓の外。
桜の花びらが、 ひらりと舞っていた。