春は眩しくて、届かない
ひなの家に行ったときも。 バレンタインも。 “好きだよね?”って笑われた夜も。
全部、 ひなが隣にいてくれたから。
陽奈は少し黙って、 それから小さく笑った。
『……りのん』
「ん?」
『幸せそうでよかった』
その言葉が、 やさしく胸に落ちる。
りのんは目を細めた。
「……うん」
窓の外では、 春の夜風が静かに桜を揺らしていた。
陽奈が急に「あ」って声を出す。
『ていうかさ』
「ん?」
『明日、終業式だよ!?』
『高2終わるんだけど!?』
『信じらんなくない!?!?』
「……あ」
言われて初めて実感した。
冬が来て。 雪が降って。 バレンタインがあって。
気づけば、 もう春。
ひなといられたこの一年は本当に幸せで一年前の私たちよりも
ずっと強い気がすると思えた夜だった。