春は眩しくて、届かない
-Summer-
いつもの図書館 りのんSide
春は過ぎて、夏の日差しに変わっていった。
桜の色はもうどこにも残っていなくて、 窓の外では、濃い緑が揺れている。
私たちは、七月を迎えた。
新しいクラスにも慣れて。
廊下ですれ違えば自然に手を振って、 昼休みになればいつもの中庭へ向かう。
そんな毎日が、当たり前になっていた。
「あっつ……」
中庭のベンチに座った陽奈が、ぱたぱたと手で風を送る。
「りのんー、ひな、溶けちゃう」
「りのん助けて……」
「暑いのはわたしも同じだよ、、助けるってどうやって?」
思わず笑うと、陽奈も「わかんないけどー」と笑った。
夏の日差しは強くて、 春みたいなやわらかさはもうない。
それでも。
隣で笑う陽奈を見るたび、胸の奥が少しだけざわつく感覚は消えなかった。
あの日、公園で柏木くんと話したことも。
陽奈が「羨ましい」って言ってくれたことも。
全部、ちゃんと胸の中に残ったまま。
夏の風が、木々を揺らして通り抜けていく。
私たちの“いつも”は続いている。