春は眩しくて、届かない
「……鈴野」
ふいに名前を呼ばれて振り返る。
柏木くんだった。
「今日ひとり?」
「え、まあそうかも」
陽奈がそう返すと、湊は少しだけ気まずそうに視線を逸らした。
「……本当に申し訳ないんだけど」
「ん?」
「さっきのノート、ちょっと借りたい」
「また寝てたの?」
「半分くらい記憶ない」
真顔で言うから、陽奈は思わず吹き出す。
「なにそれ」
「わりぃ」
いつもの昼休みとは少し違う空気の中で、 わたしは「はいはい」と笑いながらカバンからノートを取り出した。
「さんきゅ」
ノートを受け取りながら、柏木くんはいつもの気だるそうな声で言った。
「ちゃんと返してよー?」
「努力はする」
「絶対しないやつじゃん」
思わず笑うと、柏木くんも少しだけ口元を緩めた。